「最高に楽しく泣ける!だが、もったいない。」イン・ザ・ハイツ HirosHiさんの映画レビュー(感想・評価)
最高に楽しく泣ける!だが、もったいない。
思い入れの強い大好きなミュージカル作品。初っ端の♪In the heights から泣かされっぱなしだった。
大学のミュージカルサークルで公演し、3月の日本版インザハイツも観た私でも、映画の字幕を追うと歌詞の内容を分かってないところが数多くあったと再発見。けっこう下ネタも多い。サロンやプールでラテン系の肉感的な美女たちが肌を露に踊り狂う様はなかなか見応えがある(笑)
主演のアンソニー・ラモスが良い。素朴でかわいい。30近いくせに恋に疎いウスナビにピッタリだった。
ヴァネッサ役のメリッサ・バレラは、ともするとステレオタイプになりがちなセクシー姉さんの役どころを、揺るぎない意志の強さとふとしたところで見せる優しさで多面的に演じていた。
ソニーも舞台版よりわかりやすく少年然とした風貌で、年上のウスナビに恋の指南をするところが最高に可笑しかった。
ただ、ニーナとベニーがあまり印象に残らない中途半端な顔立ちだったなぁ。ウスナビがダメ男でヴァネッサがお色気だからニーナ&ベニーはもう少し正統派の美男美女にして欲しかった。
意外だったのが、ニーナの父ケヴィン役にスターウォーズのオーガナ議員が扮していたこと。娘に優しいが厳格でちょっぴり古風な父親を、彫りの深い顔と大柄な身体、深みのある演技で演じていた。
が!とにかく残念だったのは、映画ではオリジナル舞台版と異なる改変が大事なところでいくつもあったこと。
そもそも舞台版には、ウスナビがビーチで子どもたちに話を聞かせる描写はない。客に語りかけるラップを子どもに語りかけているという手法に変えたと思いきやそれ以上の仕掛けがあった、、が、あまり効果的ではなかったと感じる。
1幕ラストの盛り上がりである♪The club 〜 black outではナンパ男に殴りかかるベニーの引き起こした乱闘騒ぎからナンバーが始まるから面白いのに、そこはカット。
極め付けは、この作品の肝であるラストのアブエラの似顔絵スプレーアートも登場しない点。あそこが1番インパクトのある感動ポイントなのに。もったいない!
ただ、ミランダのノリよくハートフルなラテン音楽と、わかりやすい映像表現でかなり見応えのあるミュージカル作品には仕上がっている。