「ミュージカルというSF」イン・ザ・ハイツ 缶ピーさんの映画レビュー(感想・評価)
ミュージカルというSF
見どころとされているダンスシーンなのだが、とにかく見づらい。
カメラのカット数が多く、歌のワンフレーズ毎にカメラがぶつ切りに変わって忙しなく、ダンスが見にくい。ダンサーは一流なのに、その表現力を見せる為のカメラワークでは無く残念。
ダンサーが全員カメラ目線で踊っていることは、恐らく元の舞台へのオマージュなのかも知れないけれども、それが映画としての表現の邪魔をしており、作品としての工夫が足りない。
ミュージカルとはSFだと思う。
現実には起こり得ない「みんなが急に歌って踊る」という非日常を表現しているからだ。
そんな非日常を成立させるには、それを正当化させるだけの強い感情と動機がなければならない。
今作「イン・ザ・ハイツ」には、登場人物達の歌って踊らずにはいられない程の強い動機が感じられない。
シナリオの内容が薄いという指摘もあるが、その通りだと感じる。作中の歌とダンスは明るさを讃えてはいるものの、その明るさを発するだけの反作用としての負の感情、いわば「やるせなさ」が全く足りない。そのためカタルシスとして成立しておらず、登場人物達の中で何かが起こっているとは思えない。
派手に歌って踊っていれば満足する手合いには良いと思うが、私にはとても退屈な作品だった。
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