「2/13 試写会」黒い司法 0%からの奇跡 とーりさんの映画レビュー(感想・評価)
2/13 試写会
Based on a true story. 今を生きる私達へのアラバマ物語 --- これは映画を大きく飛躍させるような作品ではない。ただ、これは全人類必見の血の通った名作である。これはもしかするとあなたが今までに幾度となく見てきたタイプの"予想"できる作品かもしれない。ただ、心突き動かされるのに理由なんていらない、パワフルな法廷モノの新たな金字塔。見過ごすには惜しすぎる。ブライアン役マイケル・B・ジョーダンとマクミリアン役ジェイミー・フォックスの名演がより素晴らしいものにしていることは言わずもがな、個人的にはキーパーソンとなるラルフ役ティム・ブレイク・ネルソンも良かった。自身で脚本も担当して、それらを紡いでいく監督デスティン・ダニエル・クレットンの手腕は傑作『ショートターム』然り素直に心掴まれ気持ちを持っていかれる。彼の盟友ブリー・ラーソンも彼女らしい一本気な正義の人を体現している。中には「こういう"実話"モノもういいよ」と思う人もいるかもしれない。ただ、それは大間違いである。こうした人間の尊厳を踏みにじる差別と迫害の歴史、いや悲しいかな現在まで続いている状況は、だからこそ何度だって語られる価値があるし、その一つ一つの"実話"に人生振り回されたり尽力したりした人たちがいることを忘れてはならないのだから。大きいも小さいも使い古されたも新しいもない。根本に訴えかけてきて、ぐうの音も出なかった。
EQUAL JUSTICE INITIATIVE 彼らが長年にわたり無償で行ってきた活動はまさしく"正義" --- それによって多くの人々の命が救われてきたことに感慨と尊敬の念を覚える。ただ、作品自体は決して楽観視することなく最後にはまだまだ変わらないといけない現状もしっかりと取り上げる(ex. アダム・マッケイ作品、スピルバーグ『ペンタゴン・ペーパーズ』)。あの保安官は本気でムカつく。直近で言えば『リチャード・ジュエル』を見ても思ったことだが、こんなにもずさんな捜査が(少なくとも)20世紀末比較的近年までまかり通っていたなんて驚きだ。しかも本編最後の最後に出てくる誤審による死刑囚の数にはもっと愕然とさせられる。ふざけるな。黒人だからってなんだ。美談で言ってるわけじゃなくて純粋にその感覚が分からない、白人至上主義なんてバカげてるし憤りしか覚えない。実際、本作主演マイケル・B・ジョーダンが脚光を浴びた『フルートベール駅で』でもそうした警察官によって殺された実際の青年を演じており、この数年でそうした状況に直面する実際の人物をまた演じていることからも、(非常に残念ながら)圧倒的な数であることが伺えるだろう。
「生来有罪」「推定有罪」IN GOD WE TRUST