ザ・ゴールドフィンチのレビュー・感想・評価
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ちょっと…
説明がないため、全体的にわかりにくい内容になってしまった。小説を読んだ方が良い気がする。テオと亡くなった母親との関係、時系列も前後するので、登場人物も分かりにくく、アンティークショップの偽物を売る背景、絵画そのものの価値など描写が希薄。アンセル・エルゴードというより、テオ、ボリス両者の少年時代の子役の演技が光っていた。ニコール・キッドマンの老いゆく様、メイクが凄い。若いときは一瞬誰かと思った。
オランダ絵画好き必見。余韻に浸れる作品。
ファブリティウスの遺作、ゴシキヒワの絵の数奇な運命に重ねるかのように、絵を巡って巻き起こる、1人の少年テオの数奇な人生のお話。
オランダのマウリッツハイスでゴシキヒワもレンブラントの解剖学も実際に見た。レンブラントの弟子でフェルメールに影響を与えたとされるファブリティウス。詳細まで丁寧に繊細に描かれたゴシキヒワは、小さいながら人を惹きつける力は凄まじかった。
とても賢く、餌箱の鍵を自分で開けて餌を食べることもできる、ペットとしてもよく使われた鳥。ファブリティウスはデルフトの爆発事故で亡くなったが、ゴシキヒワの絵は瓦礫の中から運良く見つかった。
そして、本作品はその絵がアメリカのメトロポリタン美術館におそらく企画展で来ていたところから始まるフィクション。
テオは母親とたまたま美術館に来ていて、母親が一番好きと言ったゴシキヒワの絵の前で、ほんの一瞬母親と離れた、その瞬間に爆発事故が起き、テオは母親を亡くした。
隣にいたのはアンティーク家具店で経営面を担うお爺さんとその孫の少女ピッパ。
ピッパはフルート練習に明け暮れていて、オーディションのために美術館に来ていて事故に巻き込まれ、生き延びたが音楽は諦めた。
その祖父は、テオに指輪を託し、更にゴシキヒワの絵を持ち去るようにテオに命じて亡くなる。その絵をどうして良いかわからぬまま、でも大好きだった母親が好きと言った宝物として、ずっと隠し持っていたテオ。事故以来居場所に飢え、愛してくれた母の記憶を重ねて絵を胸に抱くテオの心境を鑑みると辛くてたまらない。
託された指輪をもとに訪ねたアンティーク家具店の主人ホビーに可愛がられ家具について教わったり、友達のアンディ・バーバーの裕福なバーバー家で、絵画好きなアンディの母に良くして貰うも、突然現れた蒸発したはずのアル中の父親と彼のがさつな彼女に引き取られてロスへ。馴染めないながらも学校で、ボリスという友達ができて、ボリスもアル中の父に暴力を振るわれていたりで、傷を癒し合うかのように、悪事もしながらも友情を深めていく。
でも、テオの学費まで使い込もうと画策し失敗し途方に暮れた父親が事故死し、血も繋がっていないし苦手な父親の彼女から逃げるように、ロスを逃げ出しニューヨークに戻り、一番居心地が良かった、家具店ホビーの元へ。経営面を担うようになり、立派な骨董商人へと成長するも、修繕されたアンティーク家具を本物として高値で売った事が相手にバレて、ゴシキヒワの謎についても追及される。
絵は隠し倉庫に隠しているテオ。追い詰められ、かつて覚えたドラッグを密かに再び吸うテオだったが、なんと悪友ボリスに絵はとうの昔にすり替えられ、その絵は悪党達の商売担保に使われていた。
大切に育ててくれたホビーに問い詰められ、ホビーのかつての相棒だったピッパの祖父の差し金とは言い出さず、悪友ボリスのことも口に出さないテオ。
結局、ボリスともニューヨークで再会でき、ボリスの闇人脈のおかげで、危険に手を染め人を撃ったりありながらもどうにかゴシキヒワは警察に押収され、美術盗品世界から、元いた芸術世界へ戻る。
だが、蒸発して戻るも愛情は感じないし、事故死した父親、亡くなった母親、水難事故死した友達アンディ、ニューヨークについて来られなかったボリス、大好きなのに彼氏がいるピッパ、すり寄ってきながら裏切る婚約者トディ。都度愛してくれる人は現れるが、なかなか無期限に一緒にはいられない。自分のせいではないのに、幼い青年には傷つく事柄や別れが多すぎて、吐露せず1人で抱え込んで苦しむ癖がつくのも、弱みを見せぬよう別人を装う癖がつくのも無理はない。出会いと別れが沢山あり、表と裏も沢山経験する人生。
それでも、母親が愛してくれた記憶は鮮明に残っている。でも、実は父母亡き後も、バーバー夫人もホビーも、無期限無条件にテオを愛してくれている。命を危険に晒しても友情の仁義をきってくれるボリスもいる。
まるで絵画のように、たらい回しを経験しているテオだが、無期限無条件の愛を信じられるようになれば、味方は周りに沢山いる。
いつか、母親が遺したエメラルドのピアスを心底喜んでくれる人に出会って欲しいし、いつかそれがピッパになる日も来て欲しい。ピッパには緑がよく似合う。
悪い世界を経て、最後にはゴシキヒワのように、美術品や音楽や骨董品と言った本物の芸術、信頼を大切にする人達のもとへ戻って来られたテオ。
貴重な絵画それぞれにも、テオのように、様々な持ち主との様々な歴史があり、テオの母親のように、画家が作品に注いだ感情や込めたメッセージやタッチは、脈々と生き続ける。絵画と人生を重ねた、余韻に浸れる良い作品だった。
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