劇場公開日 2019年10月4日

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「ドイツ表現主義を彷彿させる視覚表現の優れた統一性」ジョーカー グスタフさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ドイツ表現主義を彷彿させる視覚表現の優れた統一性

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悪役ジョーカーの誕生秘話を丁寧に、しかも同情的に寄り添う内容で邪悪の説得力を持つ境地に至った傑作。新自由主義経済の行き着く先のアメリカンドリームの崩壊に、ゴミのように扱われる人間の怒りが社会と時代を象徴すのか。主演のホアキン・フェニックスの精神に異常を来たす演技が、不気味さと悲哀を兼ねた複雑な表情を見せて圧倒的です。そこにパントマイム風ダンスが優雅さを加える。眼を覆うばかりの残酷な殺害場面が続くも、動機の細微な表現は確かになされている。表現のこだわりでは階段の描き方が傑出していた。通常の階段を上る明(正)の意味合いを真逆の暗(負)の象徴として統一している。主人公が置かれている状況、辿るしかない方向を暗示している。地下鉄で三人目の犠牲者が階段を上がるところで撃たれるのも対比になっている。会社を首になっても上機嫌で階段を降りていく先にさす解放された異様な明るい光、または恍惚のダンスを見下ろすふたりの警察官が映りだすところなど、ドイツ表現主義の継承が窺われる。後者はもっとカット割りで生かしてもらいたかったが。物語は、途中まで「キング罪の王」との類似をかすめるも、後半は主人公が謎のウイルスの如く社会に蔓延し、人に取り付く病原体のような恐怖を感じないではいられなかった。

Gustav
talismanさんのコメント
2024年6月14日

ドイツ表現主義、確かに!

talisman
マサシさんのコメント
2023年6月2日

ありがとうございます。『私は告白する』のレビューありがとうございました、貴殿のレビュー(解説)を読ませていただきいつも感心してますが、今回もとんでもない誤解が解けました。なんできがつかなかったか?
そうでした。ケベックだと言う事です。それが凄く大事な事でした。フランス語喋っていましたし、神父や懺悔はカスリックですものね。ケベック民族解放戦線の時代もあった訳ですから。
いゃー、ありがとうございます。
このジョーカーもドイツ表現主義と繋げて鑑賞されるとは!大変に感服します。
今後ともご指導お願いいたします。
ありがとうございました。

マサシ
KENZO一級建築士事務所さんのコメント
2022年11月11日

 Gustavさんへ
なる程、階段のシーンが重要な意味を持っていたのですね。
いつも教えて頂く新たな気付き、今後の鑑賞に役立てたいと思います。

KENZO一級建築士事務所