劇場公開日 2019年10月4日

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「現実世界は、ジョーカーを生み出す」ジョーカー さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現実世界は、ジョーカーを生み出す

2019年10月12日
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※実は公開当日に観ましたが、様々な理由から遅くなってしまいました。

観た後、僕は呆然としました。
あまりにも内容がリアルでセンセーショナルなだけに恐ろしいです…

劇場を出た後、僕は激しい感情の入り乱れが起きました。
「凄まじい映画を観た」と興奮し、
「こんな危険な内容を絶賛して良いのか?」と葛藤しました。

さてジョーカーと言えば、今までジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレット・レトの3人が演じてきました。

その中でも僕は何と言ってもヒース・レジャーでした!
そのヒース・レジャーのジョーカーは、とにかくクレイジーな行動をしでかすサイコパスでもあり、頭のキレるという最高の悪役でもあります。

これはあくまで自分の勝手な解釈ですが、個人的にはジョーカーは「混乱をもたらす者」というイメージです。
だからこそ、この映画はだいたいイメージ通りではありましたが、ヒース・レジャーのサイコパス感とはまた違ったジョーカー像になりました。

さて、この映画で僕は2つの"怖さ"を感じました。
それは、「ジョーカーという人物」の怖さ、もう一つは「リアル」という名の怖さです。

この映画では、自分の病気や貧困問題、いじめ等の数々の問題を抱えながら生きているジョーカーことアーサー・フレックが描かれています。

ヒース・レジャーを超えたかどうかは解りませんが、ホアキン・フェニックスの演技は確かに狂気を感じるほどに凄まじい演技でした!
特に予告編でも流れていた「高笑いをした後の無表情」は本編観ると更にゾッとなります。
他にも挙げたらキリがありませんが、このヒース・レジャーとはまた違った怖さを体験することが出来ました。

そして、ホアキンの演技と素晴らしいジョーカー像と相まってか彼の行動が全然予想出来ませんでした。
特に悪に染まった後の彼の行動は得体の知れない怖さがあって常にゾクッとしてました。

今作のジョーカーは彼がジョーカーになるまでが描かれていますが、彼の心情の根幹まではそんなに触れられません。
もともと健常者だったけど自分の境遇に絶望して悪の道に外れたのか、元から悪を秘めていて自分の境遇を境にそれを解き放ってしまったのか。
このどちらかだと思いますが、どちらも共通してるのは「自分の悲劇を喜劇と捉えた」ことです。

ちなみに、この映画は「タクシー・ドライバー」と「キングオブコメディ」から影響を受けたと監督は公言していますが、僕は「タクシードライバー」のみ観ています。
なのでキングオブコメディには触れられませんが、「タクシードライバー」には確かに連想する場面が多かったです。
ゴッサムシティの息苦しく鬱々とした空気や主人公の無垢で毒を漂わせる心情等、この映画にも出演しているロバート・デ・ニーロを思わせるものがあります。
何と言っても、鏡に向かって銃を構えるシーンはそっくりです!

もう一つの「リアル」な怖さというのは、この内容が現在の社会情勢に思い当たる部分が非常に多いということです。

ゴッサムシティにおける富裕層と貧困層の分断は世界中どこでも起こっていることですし、日本でもそうです。
また、劇中でジョーカーに影響されて仮面を被ってデモに参加する光景はまさしく今の香港そのものです。
(つい先日覆面禁止法という法律が施行されたのも考えさせられます)

今作のゴッサムシティは、まさしく今の世界情勢の象徴としか思えません!
この映画は、明らかに現実世界にジョーカーを生み出したら?という内容であり、そういった意味では現実世界に現れたゴジラを描く「シン・ゴジラ」にも少し共通している部分はあると思います。

その要素を引き出したのは他でもない演出や映像のフレーミングの素晴らしさです!

ちなみに好きじゃなかった点としては、ジョーカーを頭良いところを見せて欲しかったところです。
そういうイメージが付いてたので、そこのところ物足りなく感じました。

ジョーカー、それは「混乱をもたらす者」
この世界は、きっとジョーカーという名の怪物を生み出してしまうのかもしれません。

さうすぽー。