「ウェインのオヤジが彼の狂気に火をつけた」ジョーカー akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
ウェインのオヤジが彼の狂気に火をつけた
ONE OF JOKER STORIES
本作は、「ダークナイト」のヒースが演じたジョーカーとは別物だと私も感じた。トーマス・ウェインの性格等も異なるように。両者の間には観客が自己投影できる/ できない の深い溝があるかもしれない。
しかしなぜ敢えて今トッドとホアキンがバットマンの悪役ジョーカーの誕生秘話をやりたかったのか?
ホアキンは、自分に絡んできたり騙したり落とし入れた人間を容赦なく殺す男を悲壮感をもって演じた。そして映画のラストでは、英雄として祭り上げられる。しかしピエロのメイクは人相を特定できず、あくまで大衆の代表として。
ゴミは回収され、適切に処理しなければ街は病原菌やネズミやゴキブリでいっぱいになってしまう。定期的にカウンセリングを受けなくてはならない精神病患者を野放しにすればいつか重大犯罪を起こすかもしれない。犯罪者たちも適切に隔離するか処罰しなければ社会の公正さは失われる。誰かがやらなければならない仕事はたくさんある。
実の母親と思って暮らしていた人は実の母でなく、誰が父かもわからない。貧乏ゆえに痩せていて、なにかあるとつい奇声を上げて笑ってしまうという病気がある。子供は好きだが、自分の子供はなく他人のこどもをあやすことはできない。そのくせ、他者への興味はまだ十分にある。悲しすぎるアーサー。
母親が入院してからの見舞いのシーンなど、「ダークナイト」のジョーカーが病院を襲うシーンの伏線になっているのかもしれないと思う。
ヒースが演じたジョーカーは、とんでもなく狂っている男だった。いや、火薬と爆薬とガソリン及びタイマーやリモートの発火装置を巧みに扱う彼は、知的かつ冷静でなおかつ銃と人間の扱いにも長けた冷酷な殺人鬼だ。化物か悪魔のように人の心さえ自分の思うままに操る。
ダークナイトシリーズを経てからの観客には、まだ本気で狂っていない本作のJOKERは受け入れ難い気もするのもわかるし、私の違和感もそこにある。あらためてヒース・レジャーのジョーカーが、見た目、喋り方、撃ち方など狂気のピエロの悪役っぷりが、段違いにすごすぎる。本作のホアキン・ジョーカーでは、白昼の銀行強盗は成功せず、ゴッサムのギャングどもとも互角に渡り合えないのでは?
でもブルースもまだ少年だから、時間はまだある。バットマンはいない。テレビでこのホアキン・ジョーカーを見た少年がジョーカー二代目になればいいのだ。
ところで、「ダークナイト」での正体不明の殺人鬼という設定だが、十数年前に逮捕された警察の記録があってもゴッサムシティにおける自分の犯罪記録を抹消するくらい警察内部に精通しているヒース・ジョーカーには、真の正体を隠すことなどなんてことないのだ。