「詰めが甘く、勿体ない」薄暮 hakさんの映画レビュー(感想・評価)
詰めが甘く、勿体ない
構想は良く、ストーリーとしても良くできた作品だと思います。
何気ない田舎の一風景を、丁寧に取り扱った青春ストーリー。
声優陣も豪華で、自然な会話が魅力的でした。
その一方で、1時間程度と短い作品のために、話の肉付けが薄く感じ、勿体ないと思いました。
他の方も書かれていますが、震災によって佐智が内気になってしまった背景や、バイオリンだけは辞めなかった意思、佑介の中学校時代など、登場人物の性格や行動を形作ってきたであろう部分に、もっと触れていたら、本作の評価も変わっていたのではないかと思います。
パンフレットには、加藤清史郎くんが、監督から佑介のたくさんの裏設定を聞いて役作りをしたというコメントがあります。表に出てくるべき設定が、作中に出てきていないのではないか、そう思ってなりません。
アニメーションの質という面でも気になりました。
鹿島の風景が冒頭に出てきますが、登場人物の行動範囲外であり、正直いわき市民へのサービスというだけではないでしょうか。
もっとストーリーに関わる部分に力を掛けるべきだったのではないかと思います。
佐智の家などは、実際にある家の写真をグラフィックソフトでアニメ画像に加工したような・・・そんな違和感を感じてしまいました。
結末の文化祭での四重奏のシーンは、素晴らしい演奏シーンの間に、全く動きのない、いわきの風景コマを入れているために差が激しく、見ている側としては、既に使ったコマを差し込むことで、なんとか時間稼ぎして体裁を整えているように見えました。
予算さえあれば、こうはならなかったのではないか・・・と思うような作品でもあり、本当に勿体ないと思います。