「人情話」任侠学園 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
人情話
面白かった。
面白かった、だけじゃなく感動した。
空々しい金言の数々なも、立場が変われば心にも届く。是非、地上波で放送するだけの度量を見せて欲しいと思った。
いわゆる幻想とも言える「任侠」の話だ。アウトローな面々が織りなす人情話がホロリとさせる。今まで観てきた西島さんのどの作品よりも、今作の西島さんは大好きだ。人の良さが伺えたりする。
エンディングから想像するに、これまでの西島氏をいかに崩すかを命題として掲げてたようにも推測する。
阿岐元組の皆様はナイスなキャスティングだった。
特にやっぱり西田敏行さん…凄い。
元々、西田さんを観たくて行ったので、大満足!深淵の如き深さを醸し出す。
コメディな側面を外す事なく、やくざの背骨をがっちり壊さなかった。
フロントラインが何をやろうと、組員っていう立場を与えてくれる。こんなに心強い後ろ盾はないんじゃなかろうか…。
見事な仕事だった。
一昔前の日本では当たり前だった事を、当たり前のように語る。
悪い事をしたら謝る、とか。
ありがとうと伝える、とか。
アウトローの美学と言うのだろうか…そんなものもありはするのだが、人に向き合い、信頼し信頼してもらう。そんなプロセスがジワリと染みる。
事あるごとに、やくざとしての側面を匂わすのも、随分と粋である。
いやぁ、でもやっぱり頭っから最後まで、西田敏行さんだったなぁー。
この映画的にも親父だと思える。
なにやら続編の構想もあるらしい。
今度は温泉宿なのだとか。
「嘘八百」にしても「任侠学園」にしても、寅さんの穴を埋めようしてるようにも思え、男はつらいよシリーズには日本人の良心がいっぱい詰まってたのかと想いを馳せる。
曲がり曲がった価値観を、ぐぐぐっと矯正する存在とでも言うのだろうか…その3作に郷愁にも似た感情を抱く。
観れて良かった。
この時代に提示した意味は十分にあった。
神戸の教師が教師を虐めるような時代である。自らの行動がどれほどカッコ悪い事か、小さい器であるのか…ハタと立ち止まり振り返るキッカケになり得る。
そんな心意気を作品から感じたりする。
時代の風潮にはそぐわず暴対法なんかもあって、モラルの塊りのような面々は揃ってNOを突きつけるのだろうが、待ってほしい。
今の世代が蔑ろにしてきたモノがいっぱい詰まってて、それこそが今の時代をも救えるヒントになるんじゃないかと思える。