「任侠道のゴリ押しが面白い」任侠学園 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
任侠道のゴリ押しが面白い
作品としては学園の再生と極道一家という異質の組み合わせによるダイナミズムをバネにしたコメディである。現代の価値観に対抗して任侠道をゴリ押ししていくのが面白い。ときに応じて唱和する「阿岐本組三か条」が傑作だ。
一応西島秀俊が演じた日村が主役だが、人情家で実はちゃっかりしている阿岐本親分を演じた西田敏行を存分に楽しめる作品である。本人がいないところでも日村が語る親分のエピソードに昔のテレビコマーシャルのセリフが出てきて笑える。主題歌は阿久悠作詞の「また逢う日まで」で、これを西田敏行が歌う。上手いのはもちろん、歌声に味がある。
伊藤淳史は脇役をやらせると物語が引き立つ。本作品でも斥候のような役柄で物語を先に進めていく。中尾彬のスーツは如何にもヤクザのスーツという感じで堂に入っている。伊丹十三監督の「ミンボーの女」でも迫力のあるヤクザを演じていて、本作品では往年の武闘派という印象だ。もう少し活躍してもよかった。若手では、葵わかながいい。この人も達者な脇役になるだろう。岡山の奇跡でデビューした桜井日奈子はいまひとつ。光石研が上手に演じた小日向の存在が作品を立体的にしている。
ところどころ笑える楽しい作品である。その上いくつかのシーンは不思議に心に残る。演出と撮影が秀逸だからだと思う。同じスタッフで続編が観たい気がする。
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