よこがおのレビュー・感想・評価
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言い訳すらも許されない状況
苦しい時は苦しいと言葉に出して言えるのが当たり前のように感じていた。人生の些細な出来事の積み重ねによってそれすらも許されない状況にじわじわと追い詰められていく怖さにただ震える。 世の中にはあらゆる弱者がいるが、助けてほしいと叫ぶことすらできない人間、世の中に弱者と認められない人間の中にも多くの弱者が潜んでるのではないだろうか。 淵に立つ以上に筒井さんがむき出しの恐ろしい芝居をしていて、本当にすごい女優だなと改めて感じてしまった。
市川実日子の髪がボサボサな感じでイイ?
時系列を少しずらした展開と編集に才気を感じるサスペンス。 筒井真理子の境遇の変化と壊れていく様を静かに演じて印象的。 対する市川実日子も何時もの不機嫌な表情と得体の知れない感じで好演。 1週間以上も洗ってないボサボサの不潔な感じの髪の毛もイイ感じ。 あまり説明台詞もなくてキチンと映像と進行で分からせる真っ当な映画。
重くて痛々しくて。。美しかったです
狂ったのか狂わされたのか、愛って怖いな、と思いました。 偶然と故意に翻弄される女性、陰鬱として艶めいて、ささやかな復讐に燃える姿はいやらしく美しくて。 穏やかな生活が一変して、乱されて諦めと慣れとで無感情に世界を閉じようとしつつ、静かにふつふつと怒りをためていく。 純愛というか情愛というか偏愛というか固執というか。。2人の女性の想いが重くて痛々しい。 すっきりもしない、後味も悪い、けれどこのざらりと残る暗い余韻が何とも言えず。。おもしろかったです。
後悔先に立たず、善人に降りかかった災難に震える
鑑賞後の余韻が物凄いです。 100%善人の市子は、突如訪れた不運という言葉では片付けられないけど、その表現しか見当たらない出来事により全てを失います。市子は被害者なはずだし、巻き込まれた第三者(血縁関係があるので言い切れないけど)のはずなのに、小さなごまかし・嘘によって、加害者のような扱われ方になってしまう。その過程がとても見ていて辛く苦しく、どうして今話さないの…!と、もどかしい。でも、ごまかしてしまう気持ちも分かるし、正直に話したって状況は変わらなかったかもしれないし、何が正解かは分からない。だからこそ、ただ苦しかった。 市子の周りの人たちは皆弱い人ばかりだから、市子が結局背負うしかないようにも見えて、それもまた苦しい。甥っ子、妹、基子。みんな弱い。だから責められない。 「あの時に戻れれば…」と後悔するけど、どこまで戻ればいいのか分からない。そんな絶望や喪失がほとんどの作品ですが、でも少しは希望があると、ラストは解釈したいです。そうであって欲しいと思います。
エロい。ひたすらエロい。
最近観た中ではいちばん見応えがあった。まったく緩まない緊張感。そして、エロい。とにかくエロい筒井真理子さん。言ってみればおばはんが、なぜにこんなにエロいのか。裸のところではなく、はっきり言って裸などなくともエロい。特に最後の原っぱで悶えるところなど、もう。。となんだかエロばっか言ってるが、まあ根本的にこの褒め言葉と中身は遠からずのところにあると思う。妄想もまた人生である。
このタイトルの意味は?
別の顔? 今の時代なら女性の単身独り暮らし等普通にいるだろうがやはり自分の世界に入り込んで真面目な方でも家の中では何て事はあり得るかも被害者を救済する団体はあっても加害者に関与した人を救う手段は無いのか 犯罪の当事者ではなく親族の視点からの物語!
泣く女
ピカソの風変わりな絵は、 対象物をいろんなアングルから見たままを、 平面のキャンバスに描いているそうだ。 あの「泣く女」を中学の美術の時間に模写したのを思い出した。 正面の顔、横顔、横顔の向こう側の横顔、、、レインボウ色のワンピースをいつも着ている先生はキュビズムって言っていた。 キュビズムは物体を分解、点、線、面で再構成するそうだ。 人が見ているままを結果、箱型に表現する→ポリゴンで表現する→3Dで表現する。 最先端の3Dの映像の技術があっても、平面のキャンバスに押し込めたかったであろうピカソ、 ギリギリ彫刻のザッキン、と、今になって思う。 さて よこがお、よこがお、よこがお、 これも、よこがお、 向こう側のよこがお、、、 主人公の輪郭ははっきりとしない。 その輪郭を観客ひとりひとりが、 デッサンしていかないといけない。 主人公はどう考えてるの? 姉は? 妹は? 甥っ子は? あの人は?この人は? 過去、もっと過去、 加害者、被害者、 罪、罰、絶望、希望、 サスペンス、ホラー、 模索しながら、観客が分解、再構成しながら観れるのが心地いい。 この衣裳着てたヒゲがあったこんな顔してるそんな言い方する、、、、 セリフやナレーションに頼らないで、 クロスワードパズルを埋めていく感じがいい。
「誰にでも起こりうる」
評判が良かったので新宿に遠征。 評判通りいい作品でした。 映像が美しい。 スピード感ある映画も凄い好きですが、こう言う2時間ゆったりとした気分で見る映画も癒されます。 筒井真理子こんなに深い演技されると過去作は見てないですが、よほど良かったのが窺い知れます。 市川実日子は「シン・ゴジラ」から特別な演技が続いています。 誰にでも起こりうるような事件を取り巻く、不思議な現象が見ていて心地良かったです。
女の情念
観賞後に、何か重苦しく粘液質の澱んだ思いが残ります。 「人生を奪われた女の哀しく危険な復讐。美しくも残酷な、極上のヒューマンサスペンス。」というキャッチフレーズですが、サスペンス性よりも人間心理の奥底に潜む得体のしれない狂暴で気まぐれな獣性を感じます。 その表象として、映画は常に曇り空の下で進みます。晴天でもなく、雨天でもないどんよりと曇った天気の下で、観衆は徐々に何か鬱陶しく滅入る気分に陥っていき、主人公がスパイラルに行き詰っていくのに同調して、ごく自然に感情移入していきます。 それは前半のフラッシュバック、及び後半の主人公の意趣返しにおいても同様で、決してロジカルではない行動は、やはり曇り空の中にあって、茫漠としてはっきり見通せません。 希望や情熱を感じさせる陽ざしも、不安や失望を感じさせる雨露も無く、唯々沈鬱な不明瞭さのままに灰色の色調に晒され、消化不良の状態が続きます。 筒井真理子扮する主人公と市川実日子扮する相手役、女性同士のやり取りから泛び上がってくるのは、将に女の心の奥底に蟠り、うねり、のたうつ漆黒の情念です。悲しみと怒りの起伏が交錯し輻輳して絡まり合い、更にねっとりと湿潤した感情の昂進がぶつかり合い、不気味に蠢いて不可視的に胎動しているのを感じます。 きっと女性の深層には、熾炭のように見た目には鎮まっていても、内面では醒めた炎が青白く赫々と燃え盛っている、炉心のような情念を抱えているのでしょう。ラストのやや不可解で唐突なエンディングは、その象徴だと看做してます。 物語の中での衝撃的な変化の表出は室内のフィックスの引きのカットで描かれ、客観描写ゆえにより深刻さが増しつつ、その伏線は常に戸外のトラッキングショットやパンで撮られているのも、日常の何気ない処にある陥穽を実感させて非常に効果的でした。その典型は動物園での主人公と相手役との会話シーンでしょう。 また本作の重要なポイントである主人公の過去と現在の切り分けは、外観上は髪型と長さ、及び服装の変化で描かれていますが、容貌を見るまでもなく、その眼差しによって明らかに判ります。過去の描写では常人の眼をしている一方、現在では狂人の眼つきであり、そこには異様な黒々とした輝きがありました。思わず身震いするほどの狡猾さと狂気に満ちていました。筒井真理子の、この“眼”の切り替えは見事です。
良い映画
主人公・市子の身に起こる出来事への巻き込まれぶりが、運がないというか、いたたまれないというか、ご愁傷様です…という感じです。悲惨とか滑稽というよりも、正に運がないという感じなんです…とんでもない性格の人に愛されて(笑) 物語は基本シリアスです。 しかし、市子の復讐心は、観ている側には、やや説得力に欠けると思いました。だって、この人、いい人ですもん…自分が何やってるか訳わからなくなって、変な夢見たり…(笑) その滑稽ぶりがもっと吹っ切れて欲しかった、個人的には(笑) *ストーリーは、基本サスペンスなので、観ていて飽きることは無かったです。 *…市子さんの人生後半戦?、良いことなかったね…人生とは不公平ですな。
自暴自棄の衝動と闘いながら生きる
実存的なリアリズムに満ちた作品である。不条理な世界で人は如何に生きていくのか。世の中の不条理はどのように生み出されるのか。 主人公はどこにでもいそうな普通の女性である。ただ真面目に仕事をして生きてきた。訪問看護婦として、患者の家族から感謝されることで満足している。にもかかわらず自分の責任とは無関係なことで貶められ、非難され、迫害される。挙げ句に行き場を失い世を恨み、理不尽な仕打ちをした人間への復讐ばかり考える。いつ自殺してもおかしくない状況ばかりがつづいて、観ているのが辛くなる。 現在のシーンと回想シーンの構成が巧みで、辛い映画なのに引き込まれて見入ってしまう。筒井真理子の演技は見事だ。極く普通の善良な人間が不条理な状況に陥り、自暴自棄の衝動と闘いながら生きる姿をリアルに演じる。 人間は生きている過程で苦痛を味わい、不安と恐怖を覚えていく。不安も恐怖も知らない子供は声も大きく行動も大胆だ。しかし不安を覚え恐怖を覚え恥ずかしさを覚えると、自己抑制が働いて声は小さくなり行動は慎重になる。理性というやつだ。理性は一定の理念からではなく、恐怖から生まれている。恐怖は想像力の産物だから想像力の豊かな人ほど沢山の恐怖を感じて抑制的になる。つまり頭がよくて気が弱い人ほど理性的なのである。理性の働きは感情の手綱を引くことだから、理性的な人ほどストレスフルになる。 一方で想像力の貧しい、頭の悪い人は恐怖を感じないまま強気に生きる。子供のときのままに声は大きく行動は大胆である。弱気な人を支配することができる。支配は強気と暴力に裏打ちされる。ガキ大将と同じだ。世の中は子供の社会と変わらない。頭の悪い強気なバカな人間が頭がよくて気の弱い人間たちを支配している。バカのうちで運がよかった人間が成功者となり、運が悪かった人間が犯罪者となる。世のトップにいる人間たちは、最悪の犯罪者と本質的には同じ人間なのだ。 想像力があって気が弱い人間が心の中まで支配されないようにゴータマは恐怖の克服を説き、心の解放を説いた。しかしゴータマが予言したように人間は未だに解放されていない。それどころか支配層の愚鈍化と増長は猖獗を極め、格差はますます広がっている。加えて人々が寛容さを失い、多様性を認めなくなっている。車の運転の仕方が気に食わないと殴るし、承認欲求が満たされなければ大勢が働くビルに火をつける。 本作品は我々が狂気の時代に生きていることを教えてくれる。時代が狂気なのではない。人間が狂気を内に秘めた時代なのである。それは地殻の下に広がるマントルみたいに、時折マグマとなって噴火する。誰の身に起きても不思議ではない。真面目だった人がある日突然街で無差別に人を殺さないとも限らない。自暴自棄と暴力への衝動は日常に偏在している。マグマを噴火させずに生きていくためには、他人というよりも自分自身を含む人類に対する寛容さが必要だ。目を閉じて深呼吸をして、そして歩き出す。何も求めまい。
様々な表情
ある事件をきっかけに幸福な日常が崩れてゆく女性を描いており、構成の仕方も面白く、主人公の辿る道がどうなるかと興味を惹かれました。 微妙な立場に被害者と加害者のラインを考えさせられますし、理不尽な扱いはどうしようもなくやるせないと感じます。 やはり、主演の筒井真理子の演技が素晴らしかったです。 様々な表情を見せ、単純な言葉では言い表しにくい感情が滲み出るような。 市川実日子も表情など印象的で、脇役陣の演技も良かったと思います。
パーフェクト!
連休初日に観た『ライオン・キング』が霞むほど良かった! 筒井真理子さん、素晴らしい! 横顔って、側面って意味合いもあるのだろうけど、側面って見る角度で全然違うからねぇ。 連絡先の聞き方とか、え?それアリなの?って思ったけど、アリなんだね!私も今度真似しよう! アラフォー以降の女性に勇気と希望を与えてくれる映画、という側面もありますゾ!
普遍性があるところまでは行っていない…
話の底はすぐ割れる。主人公は確かに酷い目に会う訳だが、これが不条理なのだろうか?単に主人公が鈍いだけでは?善良だし仕事も出来るけど、人の心の襞は読めない人なのだろう。復讐するのが男を寝とることとは今さら古くさいし、男にも正体ばれてたし。基子には直ぐに感情移入出来ても、主人公には最後まで共感も感情移入も出来なかった。あんなに慕ってくれていた基子が、何故あのような仕打ちをしたのか、一度も考えなかったのだろうか?なぜ一度も真剣に向かい合おうとしなかったのか?出所した甥が先ず言ったのが「拐った女の子に謝りたい」という鈍さ。『先ずは伯母さんに謝らんかい!』そういう血なのかも。被害者意識(復讐心)に凝り固まっていたのが、真相がわかった途端自我崩壊する様を通して、人を「よこがお」だけで見ていてはだめですよ、という寓意ならわかるけど。面白くはないが…
のに
自分では懸命に 生きているつもりな のに まじめに 生きているつもりな のに 人の役に立つために生きているつもりな のに 自分の生き方は他人が決める。 この映画を観て 何度もそう感じた。 人が のに を感じたとき、妬みや嫉みが生まれ 憎悪が膨らみ、 自己破壊の芽が顔を出す。 のに は 所詮自分を正当化する手段でしかなく、結局 ので に行き着く。 映画の主人公はそう語りかけてくる。
ゆめとうつつ
夢と現、今と過去の時系列の入れ方がうまいと思いました。池松壮亮の美容師を今と過去の狂言回しとして、うまく表現できててわかりやすい。 普通の人に狂気が現れてくるリアリティがあり、入り込めました。 個人的にはもっと怖くして欲しかったです。
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