劇場公開日 2019年7月26日

  • 予告編を見る

「ある女のささやかな復讐!」よこがお だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ある女のささやかな復讐!

2024年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

う~ん、この映画の感想難しいぞ!なかなか筆が進みません。なぜでしょうか?
序盤~中盤までは、なかなか難しい映画という印象。その理由は、ストーリーの時系列が2つあり同時(交互)に語られるのため、なかなか理解が追い付かず整理がつかないのです。

1つは過去の時系列。主人公の市子が人生をどん底に突き落とされるまでの物語。もう1つは現在の時系列。「ささやかな復讐」を実行している物語になります。途中まで理解が追い付かない理由は、その復讐の理由が分からないからでしょう。そして市子の容姿が全く異なっている違和感の理由も分からないのです。

しかし2つの物語を描き、なかなか視聴者を理解をさせないのは監督の狙いでもあるのでしょう。そこが”よこがお”というタイトルを付けた理由なんでしょうから。

徐々に1つ結びついていく2つの物語と共に市子が変わっていく容姿や行動がこの作品見どころでもあり、180度人生を変えられた女性の生きていく強さや決意を感じる作品でありました。ラストで車のクラクションを鳴らし続ける市子のなにかを踏ん切りをつけた、強い姿が見えたのです。

本作の注目すべき点としては、社会問題にも切り込んだ作品というところもあります。まずマスコミのひどさがかなりダイレクトに描かれています。人権を無視した、その威圧的な態度の取材は観ていてホントに嫌気を覚えます。市子を「無実の加害者」に仕立てたのは完全にマスコミなのですから。

それをさらに受けるように日本社会の問題をも訴えた作品でもあります。被害者の家族を守られ、加害者の家族は一切守られないという現実。加害者の家族は耐え忍ぶしかないのでしょうか?こればかりは、その犯罪の性質にもよると思いますが、非常に難しいテーマだと感じましたね。

娯楽要素は特になく、あっと言わせるような盛り上がる展開もそこまでなく、観る方によっては退屈に思う映画かもしれませんが、なかなか考えさせられる「ささいな復讐」でありました。翻弄される市子を演じる筒井真理子の非常に体当たりな役柄も見どころの一つでしょう。

とら