「私は異質だった。自分が何者か妄想していた。」ボーダー 二つの世界 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
私は異質だった。自分が何者か妄想していた。
自分が周りの人間とは何かが違うことはとっくに気付いていて、それはただの障害なのかなんなのか、だけど他人にはない異能は自分を認めてもらえる才能であるし、現に成果を上げ認めてもらっている。・・・
そんなモヤモヤな気分のティーナの前に現れた、同類の臭気ダダモレのボーレ。
この展開で予想するのは、ホラーしかない。実際、R18指定に相当するグロい表現もある。
しかし、最後に残された感情は何と言っていいのだろう。知らず知らずに自分も関与していたような罪悪感、か。まるで彼ら”トロル”は、人間界に紛れ込み、人間の子として育てられた鬼だ。だけど、けして鬼=悪魔ではない。それは人間側が作り上げた”憎むべき敵”という虚像なのだから。日本においては奈良平安期の蝦夷がそうだ。そして、「桃太郎」における鬼もそう。芥川龍之介「桃太郎」の鬼をみればいい。狡く憎むべきは、鬼ではなく、桃太郎だ。ほんとうは平和に慎ましく暮らしていた鬼の世界に、土足で踏み込み彼らの財宝を奪い去った桃太郎は、彼等にとっては極悪人でしかない。同じ感情をボーレが持ったとして、なんの不思議があろうか。
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