「ムーミン」ボーダー 二つの世界 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ムーミン
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北欧にある“トロール”伝説をベースに描かれる、ダークファンタジー&異質な人達からの強烈なメッセージ性が覆う作品。表題は原作のトーベ・ヤンソンは実際の伝説と“ムーミン・トロール”との関連性は無いとアナウンスしているのだが、極東側から観れば、多分『当たらずも遠からじ』的な影響はあるだろうと観てしまう。なにせ、男?側のフォルムは“スノーク”を彷彿とさせる風貌なのでw
幻想的で自然観溢れる、まさに我々アジア人が想像するようなスカンジナビア半島観を醸し出す舞台でストーリーは展開していく。裸足で歩いても心地よい苔むす森の中、港での大型フェリーの様子、自然と調和した都市設計、そのどれもが極東の島国では存在しない澄んだ空気感を醸し出す映像である。そして澄んでいるからこそ、匂いを嗅ぐという仕草が又リアリティを以てシーンに重石を敷いている。人なのか獣なのか、尚且つ、通常のほ乳類ではあり得ない雌雄の逆転、そして鳥のように無精卵と同じような存在の赤子と、いわゆる“特殊エロ漫画”系世界観が散りばめられたアンダーグラウンド的映像に目を奪われる。テーマ自身は多様性の訴求なのだろうけど、それ以上にこの世界観の完成度の高さに親近感さえ抱く。まるでジャパンクールなソリッドステイトの設定において、共存かそれとも静かなテロルか、そんな選択肢を少数派は内在していることを表現している。さりげないネタ振りと回収も冴えていて、舞台も相俟って多分、アジア人達を知的好奇心に誘うような世界観の構築である。続編が容易に企画できそうなので、是非ともお願いしたい、そんな深夜アニメ観を醸し出す良質な作品である。
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