「フリルの付いていないメルヘン」ボーダー 二つの世界 おちゃのこさんの映画レビュー(感想・評価)
フリルの付いていないメルヘン
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物語の道筋がどう、セリフがどう、演者がどうという頭で解析する類の映画ではなく、感情に訴えかけるものでもなく、異世界から片手を少しだけ引っぱられているかのような感覚に陥る映画。
妖精の概念を知らないが、かつてトロールの人形を見てギョッとした経験やムーミンの作画って意外と仄暗いんだなと思ったことが、この映画の「妖精」と通じた気がする。トロールとかムーミンとか、北欧における妖精は日本人のイメージする可憐でキラキラした妖精とはかけ離れているのだろう。イメージとしてはむしろ妖怪に近いのかもしれない。
今作の妖精が根本的に何の目的をもっているのか、なぜ人間の悪い感情を嗅ぎ分けられるのか、嗅ぎ分けたその先に何があるのかわからないが、そのわからなさは人間と至って同じで、動物も人間も妖精も自らが何者かわからないまま、わかったところで本能に従い、自然発生的に存在し共存している。
鑑賞後、映画館からギラギラとした街に出ていくのが憚られる映画。フリルの付いていないメルヘン。「メルヘン」というものは、教えられなくともあらかじめ人間に備わっているものなのかもしれない。鑑賞時に感じた不思議な感覚は、自らに備わる「メルヘン」が反応したことによるものなのだろう。
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