「邦題はもう少し何とかならなかったのか」パパは奮闘中! つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
邦題はもう少し何とかならなかったのか
母親が突然いなくなり父と二人の子が取り残された。そんな始まりから、フランス版「クレイマークレイマー」なんて言われているようだが、そこはやはりフランス、アメリカ映画ほど単純ではなかった。
主人公オリヴィエは真面目で仲間思いの一面もありつつ、家庭内では横柄で家族との距離が離れているようにも見える。
職場では自分が言うべきことを言えず、労働組合の仕事は消極的。母親がいなくなった子どもたちの面倒を自分の代わりに誰かがみてくれないかと思っている。
オリヴィエは言う「責任を負いたくない」と。つまり彼は、職場や家庭で、チームリーダーとして、夫として、父として、求められている役割や責任から巧妙に逃げている男なのだ。
しかし物語が進むにつれ職場と家庭での責任から逃れられなくなっていく。
ならばとトゥールーズでの専任職員の仕事を引き受け、母親の帰りを待つことなく子どもたちと三人で家を出るエンディングは秀逸で感動的だ。
逃げてばかり待ってばかりでは何も好転しない。仕事でも父親としても求められている役割と責任を果たそうと走りはじめる。
ここで面白いなと思うのは子どもたちだ。兄は妹に対して、妹は兄に対して、家庭で欠けている母親の役割をし始めることだ。
オリヴィエが父親の役割を果たしてくれるならもう母親を待たなくても家族としてやっていける。この辺が現代映画っぽいかなと思った。
更にエンディングでの妹ローズはもっと興味深い。
母親がいなくなりおねしょをするようになったり話せなくなったりと一番ダメージを受けていそうな彼女が、恐らくトゥールーズに行くかどうかの民主主義の投票で「行く」ほうに投票したことだ。
母親を探しに出て見つからず諦めと覚悟ができたのか、オリヴィエは常に強い女性たちに囲まれていたが、ローズもまた幼くとも強い女性ってことなのだろうか。
最後に関係ない話。
子役が、男の子は可愛らしい女の子に見えて、女の子は可愛らしい男の子に見える、フランス映画あるある。