「多分原作映画のファンには合わない」最高の人生の見つけ方 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
多分原作映画のファンには合わない
原作映画である、モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンの「最高の人生の見つけ方」を観ていたので、軸となるストーリーは知っている状態で鑑賞しました。
面白い映画でした。しかし、モーガンとジャックの原作映画のファンの人は違和感感じるかもしれないです。
原作映画は非常にシンプルなストーリーだったのに対し、日本版では病院で出会う糖尿病の少女や引きこもりの息子との関わり、ももクロの出演など、追加された要素がかなり多かったです。
原作映画のファンであった私は、この追加要素が全て鼻につきました。一本のまっすぐ綺麗なストーリーに不自然に付け足された追加要素がどれも消化不良で中途半端に見えました。
まず引きこもりの息子。
あのキャラクターは必要でしたか?私は要らないと思いました。
物語終盤までほとんど登場しないし、どうやって引きこもりを解消するかと思ったら、ドアをドンドンと叩いて「お姉ちゃんが妊娠したから守ってあげて」と呟く。それで解決。意味分かりません。一念発起して家族を守るために家事を勉強し始めた夫の前でそれ言うか?って思いました。
吉永小百合演じる幸枝は、家事もまともにできない夫を残して死ぬ事への不安を抱えていました。これは物語に大きく関わるので絶対必要な要素だと思いますが、娘の妊娠や息子の引きこもりに関しては不自然な後付けにしか見えず、完全に蛇足でした。
次に病院で出会う糖尿病の少女に関して。
「少女の残した死ぬまでにやりたいことのリストをマ子と幸枝の二人で実行する」というのが物語の根幹となる要素なのですが、物語終盤の「少女は実は生きてました」という展開で私はひっくり返りました。これによってストーリーの根幹が覆ってしまいました。制作陣の思惑としては、「亡くなったと思ってた少女が元気に生きている感動的シーン」なのかもしれませんが、私は一ミリも感動できませんでしたし、素直に死んだままにしておくべきだったと思います。
また、原作において棺桶リストを達成する旅行は「モーガン演じる寡黙な男が今まで家族に遠慮してできなかったことを叶えるための最後のワガママ旅行」であり、「自分の長年の夢」だからこそ良かったのです。憧れの車に乗ってサーキットを爆走して少年のように笑うモーガン・フリーマンの演技はそれだけで涙が出るくらい良かった。
しかし今回は「他人の夢」です。50歳以上歳の離れた少女の棺桶リストを叶える作業を淡々とやっているようにも感じられます。「逆上がりができるようになる」というリストを見て「これ無理だわー」ってなってるシーンとか、正直酷かったです。
あと、ももクロのライブシーン。
私もアイドル好きなのであのようなライブは何度か行ったことありますが、ライブであんなことになったら場の空気凍ります。せっかく盛り上がっていたライブが台無しです。
アイドルライブが好きな私からすると正直酷すぎて見てられません。見るのが辛い。
最後に、例のエンディング、宇宙飛行オチ。観客を笑わせにきてるんでしょうか?映画館で吹き出してしまいそうでしたよ。感動的な終わり方に水を差すような酷いエンディングです。映画や脚本における用語で「ピーク・エンドの法則」というのがありまして、物語の一番の盛り上がりどころとラストのシーンの印象が作品の印象を決定するという法則なのですが、肝心のラストにあんなふざけた茶番を挟み込むのはせっかくの感動が台無しと言わざるを得ません。監督さんはこの作品をどうしたかったのか。全く理解できません。
色々と不満は多いですが、決してつまらなかったわけではなく、それなりに面白かったです。ただ、原作映画ファンの方にはオススメできません。全くの別物映画として鑑賞してください。