「2020年に必要な物語」劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song A.Gawagorakさんの映画レビュー(感想・評価)

4.52020年に必要な物語

2020年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

萌える

作画、アクション、3D、色彩や撮影、脚本など非常に濃密でスキのないアニメーションで、三部作をまとめ切った須藤友徳監督に脱帽である。ぜひ大きなスクリーン、良い音響で見て欲しい。

具体的なネタバレは避けるが、
本作は苦しみや痛みの強い物語で、クライマックスの大バトルで問題を解決するのかと思いきや、2段目、3段目の展開が用意される巧妙な構成だった。そこでは、生きるのが苦しく、痛みに満ち、自己否認をもった登場人物たちに、自己肯定と救済がもたらされる。

2004年の原作ゲーム発売当時、なぜこれほど高く評価されているのが理解できていなかったが、登場人物たちと同じ課題を持つ当時の若年層を「救ってくれる」作品だったのではないだろうか。
また、そうした自己肯定と救済は(残念ながら)今の若者たちにも必要なもので、2020年の時代に描かれるべき作品だとも思う。

なお、原作は「Fate/stay night」(PCゲーム.2004)で、分岐によって3つのルート(シナリオ)があり、全ての謎解きにあたる3番目のルートが、この「Heaven's Feel」である。第1ルート「Fate」はTVアニメ、第2ルート「Unlimited Blade Works」は劇場アニメとTVアニメがある。この構成のため、本作だけでは解らない謎もいくつかある。

関連作のなかでは、主人公の父親を描いた「Fate/zero」(アニメは本作と同じufotable制作)で、家族の因縁が描かれていているので、おススメしたい。

A・ガワゴラーク