「CG名犬バック」野性の呼び声 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
CG名犬バック
映画化は何と今回で6度目! 日本ではアニメ化もされている。
原作はジャック・ロンドンの名作冒険小説。
恥を晒してぶっちゃけるが、『野性の呼び声』というタイトルや存在は知っていたが、原作小説を読んだ事も無ければ過去の映画も見た事無い。犬と人間の冒険モノって程度しか知らない。
なので、今回の新たな映画化は実を言うとちと有り難い。
ハリソン・フォード主演となっているが、見れば分かる通り主“犬”公はバック。
演技が巧くて表情も豊かでアクションも出来て、何て賢い名犬!…と思ったら、
それもその筈。だって、CG犬だもん。
最初聞いた時、びっくり。その毛並みフサフサ感や本物と見紛う姿もさることながら、CGかよ…。
まあ確かに、今作はCGでなければ難しかったろう。
CGによる表現で喜怒哀楽の“名演技”もしてるし、危険なアクション・シーンも躍動感たっぷり。CGのクオリティーは言うまでもなく。
でも、人間がパフォーマンス・キャプチャーでバックを演じ、ハリソンと演技してる姿は見たくないや…。(特典映像で見ちゃったけどね…)
バックだけではなく、他の犬や動物たち、さらには大自然までもCG。
動物たちは物語の展開上100歩譲るとしても、こういう冒険物語で大自然までCGとは…。
勿論全てCGではなく、ヤヌス・カミンスキーによる雄大な本物映像もあるが、CGや一部セットの方が多く割合を占めている。
『ジャングル・ブック』や『ライオン・キング』のように端から全てCGでやるならばまだしも、中途半端にCGと本物映像だと、どちらに感嘆すればいいのやら…。
話自体は悪くはなかった。初『野性の呼び声』なので、ここはなかなか楽しんで見れた。
南国地で裕福な家の飼い犬としてやんちゃに暮らしていたバック。
とにかく、迷惑犬。言う事は聞かないし、毎日何かをしでかす。その日も、飼い主の誕生日をメチャクチャに。
なので、最初はバックが可愛くなかった。
反省として外で眠らされていたところを、商人に拐われ、北国地に売り飛ばされる。
そこでバックの新たな主人となったのが、犬ゾリで郵便を運ぶ二人一組の配達人。
バックはその犬ゾリチームの仲間に。
全くの足手まとい。
配達人はバックにチーム力を教える。
次第に犬ゾリチームの力となり、配達人の一人の窮地を救い、チームの中心犬に。
ボス犬はバックを目の敵に。
他の犬たちはボス犬にビビっている。
そしてお決まりのボス犬との決闘。
まるで喋り出しそうなバックや犬たち。
バック「もう乱暴は辞めるんだ!」
ボス犬「ボスはこの俺だ!」
一度は敗れるバック。
が、再び立ち上がるバック。
犬たち「負けるな、バック!」
そして今度は勝利を収める。
負けたボス犬は吹雪の中、何処へ…。
新たなボス犬の座を勝ち取り、仲間の信頼も得、見事な処世術!
でも、どうせベタなら元ボス犬と和解し、彼がバックにボス犬の座を譲るって展開でも良かったんじゃないの…?
寂しく吹雪の中に消えた元ボス犬が可愛そうだし、その後が気になる…。
気になると言えば、バックの元飼い主一家。バックが突然消えて、どう思ったのだろう…?
この犬ゾリのエピソードも悪くなかったが、犬ゾリ郵便が廃止となり、別れ。
再び売られ、バックと仲間犬たちの新たな主人は、金探しに躍起になるTHE悪人。
悪犬の次は、悪人。
やはり人間の方が質が悪い。過酷な重労働を強いられ、さすがのバックもヘトヘト。
そんな時助けてくれたのが、やっと登場のハリソン。
大自然の中を一人旅を続ける老人、ソーントン。
仲間犬たちと別れる事となり、バックはソーントンに引き取られる。
最初からハリソンが出て、バックが“チューバッカ”としてハリソンと“インディ・ジョーンズ”するのかと思ったら、前半ちょこちょこ顔を出すくらいで、本格登場は後半になってから。
話のメインはここからだろう。
“レイア”と離れて暮らし“カイロ・レン”との父子関係に悩んでいるのではなく、“カイロ・レン”を亡くし“レイア”との夫婦関係が悪化。一人旅を続け、酒浸り。
この一人と一匹は序盤で初めて出会った時から、“ハン・ソロ&チューバッカ”のように運命的だったのであろう。
絆を育み、ソーントンの亡き息子が目指していた地図に印されていない人類未到の地へ、冒険が始まる…。
一人と一匹を付け狙う悪人の逆恨み。
またこの旅の中で、バックに変化が。
バックは雑種犬。その遺伝子の中の一つに、狼。
旅の中で狼の群れと出会す。
狩りや本能や自然の目覚め。
次第にソーントンより、狼たちと過ごす時間の方が増えていく。
バックの内なる野性の声が、呼んでいる…。
飼い犬だった頃はこの巨体すら迷惑なバカ犬。
でも、見ていく内に分かっていく。
バックのこの巨体は、彼の勇気、自信、意志、優しさの表れ。
ラストの頃のバックは、逞しく、カッコ良かった。
バックはもう、人間の世界で暮らしてはいけないだろう。
内なる野性の声が呼んだ、自分が生きていく世界。
そう悪くはなかった。
冒険映画としても、動物映画としても、ファミリー・ムービーとしても見れるだろう。健全なディズニー印。
だけど…
やっぱり、本物の大自然の中で、本物のワンちゃんで見たかった。
過去の映画化で出来たんなら、今も出来ない筈が無い。
まあ、それを言っちゃあおしめぇよ、だけど。