「今までのキングスマン三作の中で最高の出来。第一次世界大戦を巡る歴史的出来事や主要人物を知っていればより楽しめます。」キングスマン ファースト・エージェント もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
今までのキングスマン三作の中で最高の出来。第一次世界大戦を巡る歴史的出来事や主要人物を知っていればより楽しめます。
①1作目は面白かったが、2作目は悪趣味が行きすぎてもうひとつだった。だから3作目もあまり期待していなかったが、こちらの予想を上回る出来。②先ずは脚本が上手い。歴史的出来事や実在の人物群とフィクションとを上手く組み合わせたストーリーテリングが出色。ニヤニヤしながら観させてくれた(マタ・ハリがウィルソン大統領と◯◯◯してたとか…)。③最初の一大アクションシーンであるラスプーチンとの格闘シーンが見事。アクション監督としてのマシュー・ボーンの面目躍如。④但し、1作目・2作目の様にアクションシーンの連続にせず、途中に『1917』かと思う様な戦争シーンを挟んでドラマ性を高めても少しもアクション映画として不自然さを感じない演出にマシュー・ボーン監督の成熟が見てとれる。⑤コンラッドが途中で呆気なく死んでしまうアッと驚く展開は、1作目の途中でコリン・ファースが死んでしまう展開の2番せんじと言ってしまえばそれまでだが、却って後半のドラマ性を高めているうえ『キングスマン・エージェント』誕生の導線となっているから単なる2番せんじではない。アクションには縁遠いイメージのあるレイフ・ファインズのキャスティングにも納得させられる。⑥ジェマ・アータートンは『007慰めの報酬』ではボンドガールNo.2ながら石油で溺死させられるという悲惨な役での登場で哀想だったが、今ではすっかり主演もこなせる中堅のイギリス女優となっていて喜ばしい。本作でも男勝りでありながらもブリティッシュレディの淑やかさも漂わせてレイフ・ファインズの右腕という女優陣では最重要の役に存在感を見せている。⑦思わぬ配役で後半から登場のアーロン・テイラー=ジョーンズも含め主要キャストはイギリス俳優ばかり。映画のラストも第一次世界大戦のイギリス勝利で終わるし、何となくイギリス映画界の意地みたいなものを感じたのは穿ち過ぎだろうか。⑧それはともかく、一人の極悪人或いは一つの悪の組織のみが世界転覆や混乱を計画・実行しているという話は最早時代遅れと思っていたが、作りようによってこれ程面白い映画になるというのが逆に新鮮で嬉しい。