「キングスマン誕生の瞬間を刮目して見よ!」キングスマン ファースト・エージェント おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
キングスマン誕生の瞬間を刮目して見よ!
1作目ですっかり虜になったキングスマンの最新作。公開延期が続き散々待たされましたが、ついにこの日がやってきました。今までとは少々異なるテイストの作品でしたが、キングスマン誕生の秘密をしっかり見届けた、もうそれだけで大満足です。
本作は、1900年代初頭から話を起こし、当時のヨーロッパで繰り広げられる第一次世界大戦を背景に、平和主義を掲げるオックスフォード公の悩み、苦しみ、悲しみから、キングスマン誕生を描きます。過去作と直接的な繋がりがないとはいえ、やはり現代のキングスマンの活躍を知った上で観ると感慨深いものがあります。
けっこうな数の人物が登場し、中には歴史上の有名人もいるのですが、視覚的にわかりやすく描いてくれるおかげで混乱なく理解できます。また、史実に絡めて展開し、その裏側ではキングスマン前身のオックスフォード公らが、戦争終結のために力を尽くしていたという設定もおもしろかったです。
その一方で、愛国心から戦争へ前のめりになっていく息子コンラッド、彼を決して戦地に送りたくないオックスフォード公を対比的に描きます。戦争映画さながらの塹壕戦は、息が詰まるような緊迫感があり、戦争の悲惨さや愚かさが伝わってきます。その後のオックスフォード公の心情も察するに余りあり、それがキングスマン誕生に繋がっていくことも自然な流れのように感じました。
主演のレイフ・ファインズは、もう若くはないのですが、体当たりの演技で魅せてくれます。クライマックスのアクションもよかったですが、今作で最も印象的だったのは、ラスプーチンとのアクションシーン。そういう意味では、ラスプーチン役のリス・エバンスの怪演も光ります。そして、それ以上に魅力的だったのは、メイド・ポリー役のジェマ・アータートン。キングスマンの諜報参謀として、また本作のヒロインとして抜群の存在感を放っていました。
ただ、過去作で魅せたスタイリッシュなアクションやさまざまなギミックを持つガジェット類は登場せず、シュールでぶっ飛んだ殺し方も本作では見受けられず、心情重視の展開も前半のテンポを落としていたように思います。期待していたのとはちょっと違っていて、いろいろな意味で過去作と差別化されているように感じました。だからつまらないということはないですし、誕生秘話としてはこれでよかったとも思いますが、やはりキングスマンの魅力は1作目のコリン・ファースが体現した姿に尽きます。ラストで意味深なシーンがあり、まだまだ歴史の裏側で活躍する姿が見られそうですが、次作ではギアをもう一段上げたキングスマンの活躍を期待します。