「フォード vs シェルビー&マイルズ」フォードvsフェラーリ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
フォード vs シェルビー&マイルズ
冒頭から迫力のレースシーンで、IMAXを選ばなかったことを早くも後悔しましたが、評判どおりとてもおもしろかったです!序盤から登場人物が多くて置いて行かれそうになりましたが、主要人物はここで出揃い、ほどなく関係性もわかったので問題ありませんでした。物語は、フェラーリの買収に失敗したフォードが、レースでその雪辱を果たすまでが描かれます。よって、タイトルはフォードvsフェラーリ。しかし、実際には、フェラーリと戦う前のフォードチーム内での争いが大きく描かれていて、本当の敵はフェラーリではなくフォード!そのフォード内で男たちの意地とプライドが激しくぶつかり合うのが、実におもしろかったです。
映像的には懐かしのGT40が登場するあたりから、テンションが一気に上がります。幾度となく繰り返されるテストラン、微調整、再設計を通して描かれる、ひたすら速さを追求する男たちの生き様が本当にかっこよかったです。そんな彼らの魂の結晶のようなマシンが轟音とともに疾走する姿に惚れ惚れとしました。と同時に、小刻みに震えるメーターや激しく振動するマシンから伝わってくる、一瞬のミスも許されないコックピットのビリビリとした緊張感がたまりませんでした。一方で、クラッシュシーンも何度か描かれていて、その度に体がビクついてしまいました。観客は、助手席にでも座らされているかのような疾走感と高揚感と恐怖感を味わえること請け合いです。
そんな命を削るような戦いに挑むマイルズをクリスャン・ベールが好演しています。そして、マイルズを支えるのは、ともに打倒フェラーリを目ざす、マット・デイモン演じるシェルビー。マイルズとシェルビー、そのどちらか一人でもいなければ、フォードの偉業は成し遂げられなかったでしょう。でも、シェルビー以上にマイルズを支えたのは、夢を追う夫を信じて見守り続ける妻モリーと、父に尊敬と憧れの視線を送り続ける息子ピーター。こんな素敵な家族に支えられたら、やるしかないでしょ!
そして迎えたル・マン。スタート早々アクシデントに見舞われるも、エンジンを限界まで回し、コーナーを極限まで攻めるマイルズの魂の走りに目が釘付けでした。しかし、やはりここでも敵はフェラーリではなくフォード!レースの詳細はぜひ自身の目で確かめてほしいです。自分は、さまざまな思いで目頭が熱くなりました。
冒頭のスタートダッシュに始まり、企業間競争、チーム内抗争、挫折と家族の支え、デイトナ、ル・マン、エピローグと、みごとなペース配分で走りきった本作に対し、観客の誰もがチェッカーフラッグを振りまくったことと思います。