「男が人生をより良く生きるために」アド・アストラ T Hさんの映画レビュー(感想・評価)
男が人生をより良く生きるために
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これは見る人を選ぶ映画ですね。
仕事なり会社なりの役割や、主義とプライドを賭けた使命を全うすべく、
多くの男性は孤独なミッションを生きる生物なのであります。
そのミッションを達成することを第一に生きる真面目な男ほど、
周りとの繋がりを捨てて闇の深淵を見てしまうことになるのです。
幼いころに父親に捨てられた主人公は、根本的に自己の完全性に対し欠如を抱えており、
どのような人に、どのような男になるのが良い姿なのかがわからない。
自らを作り出した父親の生末を確認できないと、自らの方向性の良し悪しがはっきりしない。
男というのはそういう父性像に影響される生き物である、ということがわからないと
まずこの映画のテーマは理解できないだろう。
遥か宇宙の彼方で会った父親は闇の世界に引きずりこまれ、
主人公は反面教師として自らの人生を顧みることになる。
それだけと言えば、それだけの映画。
ゼログラビティーというより、心情的にはファーストマンの方が近い。
つまらないとか眠くなったという人がいるのはよくわかる。
もう少しドラマチックな音楽が使われていれば印象も変わっただろう。
しかし感動大作みたいなテイストにしたら、この映画のテーマが分かりづらくなる訳で
乾いた深淵の宇宙で自らの存在を問う、
男というのはそんな孤独な生きものであるというのがこの映画なのであります。
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