劇場公開日 2019年9月20日

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「ベンソンアリゾナ」アド・アストラ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ベンソンアリゾナ

2020年7月11日
PCから投稿

シリアスなドラマだがアクロバチックでもある。月面ではマッドマックスのようなバギー戦を生き延び、宇宙空間を慣性で泳いでくる。
ゼログラビティで主人公がコワルスキー(ジョージクルーニー)の幻影を見る楽しいシーンがあるが、あれを地でいく遊泳をやってのけるばかりではなく、羽目板を盾代わりにして、宇宙塵を突っ切って、母艦ケフェウスへ戻ってくる。
父子の心象へ比重を置くような気がしていると、マントヒヒが襲ってきたり、船を乗っ取ったり──不釣り合いなアクションシーンが出てくる。
慣性航行前に羽目板を外したときは、もしやここでベンソンアリゾナがかかるのか──とさえ思った。
雰囲気に凸凹があり、印象が収まらない。

この監督の特徴だが──といってもThe Immigrant(2013)とThe Lost City of Z(2016)しか見たことはないが──とても良さげで、いい感じなんだが、今ひとつ佳作には至らない──という映画を撮るひとだと思う。
そのバランスがむしろすごい。
IMDBで7には至らず、でも7に届きそうな映画を撮る。
ジョンヒューズのUncle Buckで、Buck伯父が姪にボールをピンに近づけるという競技だったら優勝できると言ったのを覚えているが、あれである。

実績ある監督なので、予算も潤沢である。ゆえに飛躍した未来ではなく、テクノロジー進捗の延長上にあるような──より現実的な未来を見ることができる。それが船内やハイテク機器によく表れている。だが、かなり雰囲気で落とそうとしている気配がある。テラハに山ちゃんが「こいつ、なんか雰囲気で落とそうとしてねえか」と評する男子が出てくることがあるが、この映画もそれを感じる、とは言い過ぎかもしれないが、すくなからずブラッドピットの表情と演技力に委ね過ぎの感があった。

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津次郎