「絶望する勇気」アド・アストラ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
絶望する勇気
月へのフライトシーンや衣装がリアルで面白かった。近い未来、本当にこんな感じになるんじゃないかしら⁈
ふさぎ込んだ内向的な主人公。ブラピの「静」の演技に惚れ惚れ。
静と動の映像のリズム感が実に心地良かった。
さて。
困難を克服して栄光を獲得する物語はもう卒業しようよ、というメッセージを感じ取った。
最も優秀な宇宙飛行士であり、理想のために仕事を全うしようとする父を誇りに思う気持ちと、自分の欲望を優先させ妻と息子を不幸にした父を恨む感情が交錯する。
「本当に父親に会いたいのだろうか。」
しかし、火星での通信で、自分の素直な気持ち(父への憐憫)が発露する。そして宇宙軍の本当の目的が明らかになり、憧れの英雄である父を助け地球に連れて帰りたいと欲するようになる。
ところが父は清らかな英雄ではなかった。更にロイ自身も自らの欲望の実現のためにクルーたちを死なせている。
このあたりの描き方が素晴らしい。
過去の栄光や夢を取り戻すために暴力を行使することは虚しいだけだ‼︎
アメリカはもはや英雄ではない。一度ちゃんと絶望した方がいい。
その先にしか一条の希望は見出せないのだから。
「先の事はわからない。でも心配はしない。身近な人に心を委ね、苦労を分かち合う。そして、いたわり合う。私は生き、愛する。」
良い親ではなかったのに、息子が自分と同じ道を歩んでいることを知った父。息子が本当の自分の人生を生きるために、親は潔く子どもと離れなければいけないよね。
そしてロイは父とは違う道を歩み出した。
…ブラピの瞳が悲しく、同時に希望も感じた。
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