「ひどい映画」アド・アストラ nanaさんの映画レビュー(感想・評価)
ひどい映画
SFなら公開日に見に行った自分を未来から止めてやりたくなる映画。個人的に初めて途中で映画館を出ようかどうか迷った映画。
映画のテーマは父親とのエディプスコンプレックスのような、要するに幼少期に親父を失ったことによって父性を得られず、家族の良さや人への思いやりなどが理解できないと訴える中年男の個人的葛藤なのであるが、SFである必要があったのか??
その個人的葛藤の内面を描くにしても主人公の人生を細かく追ったりはほとんどないので、主人公の内面が薄っぺらいものにしか感じず、特に共感を呼ばない。描かれる生活といえば嫁さんに愛想をつかされて出ていかれるシーンぐらい。親父に電波を送るシーンでやたら感傷的になるシーンが出てくるのであるが、これも主人公の内面が描かれる過程が足りなすぎて、視聴者はその感情に置いてきぼりをくらう。
階級に比べて実績も特に披露されず、ワーカホリックで凄腕の宇宙飛行士という感じも出ていない。もっとも、極秘任務に行くのに護衛もろくにつかず海賊と同等のバギーで月を移動して襲われるぐらいの扱いだから、本当は仕事は大してできない扱いなのだろう。
そしてそして脚本のイマイチっぷりをブラピの演技だけでゴリ押そうとするからブラピのアップばっかりのシーンで繋がれる。しかも今回はブラピの演技も完成度が特に高いものではなく、顔芸と独白だけで主人公の内面を描き、視聴者の共感を得ることには成功しているとは言い難い。
さらにSFとしても超ド級のB級で、科学的考証なんぞは一切ない。そもそも知的生命の探査にわざわざ太陽系辺縁に行く必要があるのか?ここまで科学的に発展した未来に??観測技術も発展するだろう常識的に考えて。
ハードSFぶっているのに、離陸と同時のロケットに侵入したり、海王星についた瞬間に広大な宇宙なのに親父の宇宙船とすぐにドッキングできたり、挙げ句の果てには鉄板持ってリングに突入して宇宙船に帰還なんて到底科学的に考えたら絶対不可能と思われるガンダム技見せられ、圧倒的に冷める。
とにかく見る価値は強いて言うなら映像が綺麗なことぐらいで、SF映画や、哲学的な意味のある映画を期待してみに行くのはやめたほうがよい。