「壮大な肩透かし」アド・アストラ erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大な肩透かし
事前情報なしで鑑賞、他のレビューも一切読まずに率直な感想を書きなぐります。
まず冒頭のロイが地球へ急降下する下り、名作SFスリラー『ゼロ・グラビティ』を思い起こさせる、観るものを巻き込んでまるで自分が宇宙空間にいるかのような臨場感を体感し、秀逸な演出にこれは名作の予感・・・!とワクワクした。
そして音楽。未知なる宇宙のミステリー感を表現したような不安さの中に、父への愛情か地球への望郷の念か、切ない旋律が時折垣間見え、主人公の感情そのものといったような繊細かつ壮大、荘厳な素晴らしい音楽であった。
以上のことから序盤はかなりの期待値に達したのは言うまでもない。
しかし、この映画の肝は
果たしてどんな真実が待ち受けているのか?
父の真意とは?
未知なる生物は存在するのか?
鑑賞者の予想を裏切るような展開があるはず!というどんでん返しなミステリー要素を期待していた部分が多分にあった。同じSF宇宙ものとしては『インターステラー』級のメガインパクトを期待してしまった。
にも関わらず、オチのなさ、ストーリーの起伏のなさ、ド直線な結末に壮大な肩透かしをくらった想いだった。
また中盤の間延び感もなかなかである。
かつての父の仲間の存在、武装集団が襲ってくる場面、または実験動物が凶暴化して襲ってくるくだり(まるでモンスター・パニック)などなど、いずれもストーリーの主軸とはあまり関わりがないように感じ、無駄な場面が多かった印象。それでも何らかの伏線の可能性もあるのではないか?と予想したにも関わらず、である。
妻の度重なる伏線も終盤への何か壮大な前フリを思わせるような存在であった。しかしもやもやっと何もないまま終わってしまった。
以上、序盤の大いなる期待が冒頭のロイの如く、まんま急降下して特に何もなく墜落して終わってしまった。
SFという要素だけで壮大なミステリーとか期待するとそうでしょうね。
この映画はヒューマンドラマロードムービーを宇宙という広大な果のない場所を舞台にした映画だと思うので、そういった視点から観れば楽しめたかもしれません。