ハイ・ライフのレビュー・感想・評価
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イライラの果てに待つもの
随分、観念的でチャレンジングな作品だなと感じた。
おそらく、SFというジャンルは方便で、人類や地球の行末などを象徴的に描きたかったのではないだろうか。
船内のものを宇宙に放り出すと、コンピュータが、「生命維持が24時間伸びました」と報告する場面は、何十年と続く旅で、24時間にどんな意味があるの?と苦笑しそうになる。
しかし、ふと考えると、世界中でパッチワークをするようで、根本的な議論が進まない温暖化対策なども想起され、やはり少し笑ってしまう。
そういう意味では、この船は、地球を意味しているのだろうか。
また、女性医師の試みは、僕たちが知り得ない世界中のあちこちで行われている何らかの実験などを指すのだろうか。
先般、中国の医師が、遺伝子操作ベビーを誕生させたというニュースが報じられたことは記憶に新しく、背筋が寒くなったことが思い出される。
クルーは、僕たちなのだろうか。
日々の揉め事は、あちこちで起こる争いごとを表しているのだろうか。
そして、いずれ、人類の多くは死に絶え、汚染された環境で生き続けられるのは、ごく僅かな者たちで、それさえも間もなく死に向かうのだという事を、エンディングのモンテ親子がブラックホールに向かう場面で表したかったのだろうか。
科学の進歩で生活は便利にはなったが、環境汚染は激しい。
民主主義の進まない独裁的な国や地域で、もし遺伝子操作された子供が沢山生まれたら、世界はどうなるだろか。
観念的な神は否定され、宗教的なもののみならず、僕たちの道徳観もないがしろにされるのだろうか。
思考を巡らすと、色々と考えさせられる。
しかし、映画の中のクルーの人間性や、利己的な行動もあり、映画の最中は、思考を妨げられ、観る側にイライラは募るばかりだ。
また、僕たちの中途半端な科学的知識も思考を妨げるように感じる。
科学考証をかなり抑え、僕たちに、所謂「突っ込みどころ満載」にすることによって、ワザとこの映画の論点や焦点をずらして、敢えて、僕たちをイライラさせてるようにさえ感じられる。
本当に無重力じゃなくて大丈夫?とか、宇宙空間に放り出した遺体を長いこと眺められないでしょ?とか、小型宇宙船にカバーかけなくちゃなんないの?とか(笑)。
日々メディアやネット上で交わされる、思考のフィルターを通さない直情的なやり取りに辟易するようでもある。
そんな浅薄な知識で、上っ面だけで議論してて大丈夫なの?という僕たちに対するメッセージなのだろうか。
きっと、これは、世界中に蔓延しているイライラと同じだ。
僕たちの生きる世界は、船内に凝縮された世界とさほど違いはないのかもしれない。
ただ、僕はそれ程、悲観的ではない。24時間の積み重ねは、長い年月に繋がる可能性を内包してるからだ。
どちらかといえば、悲観的楽観主義だ。
受精
宇宙空間を進む船の中、閉ざされた空間の中での人間関係や異常な実験には敢えて強くスポットを当てていないので、独特の空気感があり何がしたいのかよく分からない。
起承転結ははっきりしないしハラハラドキドキするようなタイプではないけれど、展開が常に予想外なので興味深く面白く観られた。
無機質なモチーフの船内、わざとらしいくらいみずみずしい庭やリサイクルされる水や快楽のボックスがあって、その有機的な空間にホッとできる。
あの快楽のボックスはどんな仕組みなんだろう。
その人に合わせて変化するのかな。脳に何か作用しているのか、きちんと物理的に充実きているのか。吐き出される液体の意味とは。
ディプスのパワフルな耽りかたが好き。
いくらなんでも重力が安定しすぎなことに違和感はありつつ。
宇宙空間に詳しくないけど、どれくらいの速度でどれくらい動いたらあんなに安定するの。ハシゴ登る時にもっとフワッとしてもいいんじゃないの。
きっと宇宙空間そのもののリアリティというより、完全に閉ざされた行き場のない空間であるという認識が重要なんだと思う。
しかし宇宙じゃないと成り立たないことも多いので、この設定はやはり秀逸。
ボイジーの「ゴボッ」がもう大好き。なるほどああなるのね。
タイトルのバックの衝撃的な映像もすごく良い。
もしかしたら今生きている遥か上の方、宇宙のどこかであんな風に漂っているかもなんて考えるともぞもぞして堪らない。
ああはなりなたくないわ。
慢性的な絶望感が心地良い。
明らかに希望なんてない状況なのに新しい生命は希望的な言葉をよく口にするのが面白い。
タブーなんて理解できない頃からタブーを伝えていたのに。
二人の行く末を想像しても頭にモヤがかかったようになってしまうけれど。
船のナンバリングが意味深。あの間や前、後にもあるのかな。
ブラックホールに吸い込まれる星や塵が受精のように見えた。
宇宙で子育て
近づいているのに遠くなる
なんていう、哲学的な台詞も登場するが、それ程神秘的な世界観と、箱に閉じ込められた人間の精神の崩壊を縦糸横糸に織込みながらの抽象的テーマを表現した作品である。ストーリー構成の時間軸を、現在のパートと、その中のシーンの印象的な部分のカットバックを使って過去に起った出来事を振り返るように置き換えながら展開していく。なので初めの内はかなり複雑で整理が難しいと感じた。なにせ男が自分の娘とおぼしき赤ちゃんを育てているシーンが続き、かなりそのシーンが長いので少々飽きてきてしまうのである。女性監督という事も手伝ってか、SFディストピア(レトロフィーチャーでもある)とはいえ、スペース感は余り描かれない。“ペンローズ過程”なんてサラリと台詞でいうだけで、実はその論理はブラックホールからエネルギーを得る理論のことを指していることなんてのは普通の鑑賞客は分らないと思う。当然自分もだ。この語彙で、宇宙船はブラックホールへ向かっていて、エネルギー探索を目指しているということが説明できるのだが、ストーリー的にはそこは重要なところではないのであろう。犯罪人を集めて、半端実験台のような形で棺桶に入れて飛び出させるアイデアも、その犯罪人達が実はそれぞれの高等訓練を受けてきていたり、専門分野の人間であったりとするご都合主義が入ってくるのも、SFというより医学的又は倫理的な内容がベースなのであろうと思う。宇宙はあくまでも舞台装置なだけで、その逃れられない状況内で、一人の女医が自分の欲望の儘に非人間的実験を繰り返し、方やその対極にある修行僧のように禁欲を枷に生きる主人公を対比させることで、人間の本質を表現することが重要なのである。
官能的なシーンが多く、よく分らないが、オナニー部屋みたいなものがあるのも面白かった。シーンはなかなか激しい演技であったので集中させて貰ったがw
光速の99%で動いているのに宇宙に出て作業していたり、そんなハイレベルな船なのにモニターはパソコンモニターであったり、これは或る意味テーマ性と絡んでくるのだろうが、宇宙内で人が物が落ちていく演出(主人公が犬を殺されたことに腹を立ててガールフレンドを殺した凶器である石を井戸へ棄てる事にリンクさせている)ことなど、かなり無理のあるツッコミどころ満載さが邪魔してしまうが、最終的に、娘に成長した子供と共にブラックホールへ目指す結末は、これだけの非日常を経験した故の結論なのかもしれず、凡人には理解出来ず当然なのであろう。
序盤で主人公がまだ赤ちゃんである娘にタブー(禁忌)を教え、そして成長した子供が父親に禁忌を犯しそうになる事も、父親は拒むのも、そのタブーということに対しての絶対的遵守を訴える道徳的な側面も持ち併せている作品であると考える。
リサイクルかタ・ブーか
死刑囚や終身刑の囚人達9:人が刑の免除するかわりに宇宙船に乗り込み同乗する女性医師ディブスの実験に参加する話。…なんだけど、これを予備知識として頭に入れておかないと置いてきぼり必至。
ガタがきている宇宙船を修復しつつ赤ん坊と共に何とか暮らす男が一人。他の乗組員は死んでおり、宇宙服を着させて船外に送り出すというオープニング。
その後細かいフラッシュバックを差し込みながらも赤ん坊との生活が映し出されていき、やっとこ過去の太陽系の外に出て3年という件になり、何があったのかをみせていく展開になったと思ったらここでも結構時間軸をいじったり差し込んだり。
ある意味ショッキングな!?実験だったり欲望だったり!?にそれ程面白さも感じないし兎に角マッタリ。
まあ凶悪犯達だから動いたらバイオレンスなところもあるんだけね。
暗喩的なものと考えればわからなくもないけれど、そういう意味ではコメディとかでありそうな内容をひたすらシリアスにやったらこうなったのかな?
自分には面白さがわからなかった。
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