「老いて尚、輝き続ける…」テリー・ギリアムのドン・キホーテ ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
老いて尚、輝き続ける…
構想30年。
挫折を繰り返しながら、晩年のギリアムが創作意欲のままに作った怪作。
ギリアム作品の王道にして集大成。それでいて現代の大衆映画の型に全く当てはまらない魅力に溢れていた。
映画監督を目指したかつての青年。
映画でドン・キホーテを演じ、その役にのめり込み人生を狂わされた老人。
2人の現実と虚構が入り混じり、その境界が曖昧になる程に心地良い。
フィクションにおける麻薬のようなこの中毒性こそ、映画のマジックにして最大の"快楽"なのかもしれない。
だからこそ我々はもう1度それをを味わうべく何度も映画の世界に浸るのだろう。
それはテリー・ギリアム監督自身の人生も同じだったに違いない。映画に人生を狂わされ振り回され、それでも創らずにはいられない。
周りから見たらそれは狂人に他ならないのかもしれない。ドン・キホーテと同じだ。
それでも構わない。映画という作品を生み、そこで生きる事こそ全て。興行収入も他人の評価もここでは関係ない。
自分の衝動のままに創作する。それで良い。
ビジネス先行のシリーズ続編が乱立する中、ギリアムは魂を映像に込めた。
その創作意欲は老いて尚衰えを知らない。
いや晩年を迎えたからこそ、誰にも気を使わず自分に向き合った作品を伸び伸びと創れたのかもしれない。
それが本作の心地良さなのだろう。
虚構の中で永遠に生き続けられたら人はどんなに幸せか。
ドン・キホーテのクライマックスは、そんな想像をせずにはいられないものになっている。
いつの時代にも人には夢が必要なのだ。
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