劇場公開日 2020年1月24日

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「テリーギリアムそのもの」テリー・ギリアムのドン・キホーテ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5テリーギリアムそのもの

2020年2月12日
iPhoneアプリから投稿

そもそも世界は不可解なもので、人間は不安定や理解不能を本質とするのであって、そこではたえず幻想・喪我・忘我のトランスが起こる。
この老人は確かに狂人だけど、見ているうちに幻想のほうに私たちの軸足が移っていく。

小峠みたいに「なんて日だ!」と叫びたくなるような散々な旅。ところが徐々に現実と幻想が逆転していく。実は幻想こそ真理なのだ。ついに「夢から覚めないでほしい」という感覚に陥る。

キホーテの天敵、妖術師。現代の妖術師は映画製作者かもしれない。人々に虚構を見せて金貨を得る。

10年前のロケの情熱は永遠のものだった。ラウルの店で靴屋がキホーテになった瞬間、回ってないカメラの前で踊るアンジェリカ…
情熱を取り戻し、妖術師に立ち向かうには、自分の中のキホーテにご登場願うしかない。気高さと純情と愛のためならば、痩せたロシナンテにまたがり、サンチョを従えて荒野の果てまで突き進むのだ。

創造性と狂気は紙一重である。目覚めるわけにはいかないのだ。テリーギリアムそのもののような映画だった。30年かけた本作を私は絶賛する。

そして、アダムドライバーは当代きっての名優。テキトーな映画には決して出ない。

Raspberry