「テリー・ギリアムにしては陳腐」テリー・ギリアムのドン・キホーテ Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
テリー・ギリアムにしては陳腐
なかなか愉快なオチはつけている。
また、狂気のなせる喜劇にして、かつ、悲哀の「ドン・キホーテ」像を描いたという点でも成功していると思う。
もともとテンプル騎士団の要塞だったというトマールの修道院をはじめ、ピエドラ修道院、ガリピエンソ村といったロケ地も素晴らしい。
だが、それだけだ。
テリー・ギリアムは、アート指向の強い作家だと思う。
ストーリーより先に、撮りたい「画」があって、そこに強引にストーリーをくっ付けることも少なくないというのが、自分の印象だ。
ただ、その「唯一無二の世界観」(公式サイト)が素晴らしいので、仮にストーリー的に「?」となっても、十分楽しめた。
しかし、本作品は、テリー・ギリアムにしては“陳腐”だ。
始まってすぐ、いくつかのシーンで“映像美”にゾクゾクしたが、それも最初だけだった。
「仮面舞踏会」という、金さえかければ誰でもそれなりの「画」が撮れてしまう、ありきたりな展開にもっていったのは、とても残念だ。
とりあえず、「企画頓挫9回」の作品を完成させ、ギリアム自身が「本物のドン・キホーテ」にならずに済んだ。
とはいえ、彼の代表作にならないのは確実だろう。
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