「虚実皮膜の職人芸」テリー・ギリアムのドン・キホーテ シネフィリ屋さんの映画レビュー(感想・評価)
虚実皮膜の職人芸
テリー・ギリアムという人は、現実と幻想の世界を自由自在に行き来できる稀有の才能の持ち主だ。それは、モンティ・パイソン時代から一貫しているし、コメディだけでなく、シリアスな内容の「未来世紀ブラジル」でも、気付いたら現実と幻想の境界が溶け去ってしまう恐怖を描いた。
そんな彼が、ドン・キホーテの続編をテーマに映画を撮ったのだから、これは必見である。そもそも、ドン・キホーテ続編というのは、あの有名なドン・キホーテの物語を、セルバンテス自身がパロディにしたというユニークな作品で、登場人物は、ドン・キホーテの物語を読んで知った上で、生身のドン・キホーテをからかったり騙したりするという入れ子構造の物語である。それを、さらにテリー・ギリアムが、映画中映画という形で入れ子にするのだから、物語は二転三転、どれが現実でどれが幻想かわからなくなっていく。しかも、いつものように迷宮のような、同時に祝祭的でもあるテリー・ギリアムの独特の映像世界が全面的に展開される。そして、最後は、原作とは少し異なる希望を感じさせるエンディング。
素晴らしい傑作です。おススメ!
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