SHADOW 影武者 : 特集
9月の“アクション好きが見るべき映画”は、“これ”があったッ!!
チャン・イーモウ×三国志=その中身は── 食らって驚く、このゾクゾク!
“傘バトル”の面白さ、水墨画の映像美、世界的評価も納得クオリティ!
2018年のアジア映画界を席巻した映画「SHADOW 影武者」が、9月6日から公開される。特筆すべきは、アクションの魅力だ。さまざまな武器があるなか、本作の主人公がバトルで操るのはなんと“傘”。武器というか、普通に雨具である。
しかし、侮るなかれ。主人公の傘と敵将軍の矛がぶつかる決闘シーンを見るや、映像の美しさと相まって“ゾクゾク”が体中を駆け巡る。夏の超大作があらかた出そろった9月に“アクション好きが見るべき映画”は、この作品だったッ!
【アクション好き垂涎の要素①】武器の“ガジェット感”が面白い!
傘って、こんなに戦えるのか… リアル追求したバトルがゾクゾクする!
本作のそこかしこに、アクション好きが涎(よだれ)を垂らして喜びそうな場面が散りばめられている。傘の流麗な動き、キャラクターの優雅な身のこなし、リアルを追求したバトル……。製作陣がこだわり抜いた“職人技”に酔いしれるべし。
◆傘バトルがユニーク… “沛(ペイ)の傘”のガジェット感に心くすぐられる!傘を使ったバトルのなかでも、傘地が無数の鋭い刃で作られた“沛(ペイ)の傘”のガジェット感が最高だ。破壊的な矛を操る敵将軍と相対した主人公は、おもむろに沛の傘を構え、じりじりと間合いを詰めていく。呼吸が止まる。あたりを静寂が包み込む。
瞬間、矛の突きが猛烈な勢いで繰り出され、空気を切り裂いた。主人公はこれを、傘地に滑らせることでいなし、返す刀で反撃する。攻守が一体となった流れるような立ち回りを見ると、「傘ってここまで戦えるのか」と口があんぐり開いてしまう。
貝殻のように連結した沛の傘に乗り、独楽のように回転しながら窮地を脱するという(いい意味で)狂った場面もある。何の前触れもなく唐突に展開されるため、唖然とさせられ、「こんなシーン、何してるときに思いついたんだよ」とツッコミたくなる。数々のユニークなシーンに、心くすぐられること請け合いだ。
◆優雅、それでいて躍動感あふれる… VFXに頼らない生身のアクション!
傘の能力を最大限引き出すため、主人公たちは“女性のようなしなやかな動き”で戦う。優雅で、それでいてダイナミックな立ち回りは、本作の大きな見どころとなる。
また、本作ではデジタル技術に頼らない「職人技への回帰」という目標を掲げ、アクションにおいてもVFXはほぼ使用しなかったそうだ。職人たちが知恵と経験を総動員してフィルムに刻み込んだ “生身のぶつかり合い”は、リアルに観客の胸に迫ってくる。
◆超人的な「HERO」とは異なる… チャン・イーモウがリアルな死闘を描出!
メガホンをとったのは、「HERO」「LOVERS」で超人的バトルを編み出し、世界中に衝撃を与えた巨匠チャン・イーモウ監督。本作では、“超人”ではない人々の死闘を描くことに注力している。
スーパーヒーローではない“普通の人々”が国の命運を背負い、覚悟を決め戦う姿に、生と死が相克するドラマを見出した。「HERO」「LOVERS」の主要スタッフが再結集し、全く別のアプローチで生み出したバトルに、ゾクゾクすること必定だ。
【アクション好き垂涎の要素②】しかも“映像の美しさ”がすごい!
水墨画のようなルックと降りしきる雨… 陰と陽が交錯する“幻想の世界”
ひと目見れば一気に引き込まれる、水墨画のような美しい世界がスクリーンを支配。幻想的な映像美がアクションのダイナミズムをいっそう際立たせ、一方で物語には瑞々しいきらめきを与える。
雨が降りしきる向こうで、霧をまとった連峰が辺りを睥睨(へいげい)するさまは、夢か現か幻か……。背景に目を凝らすだけでも、非常に豊かな体験となるはずだ。
◆“水墨画”を思わせる美麗なルック… すべてを引き立たせる“白と黒”画面はほとんど白と黒で占められ、その濃淡や光の強弱だけで構築された繊細な作品世界に目を見張る。カラーコーディネートは計算しつくされており、滴る血の“赤”はひときわ鮮やかに映える。水墨画のような映像によってもたらされる“ふたつとない独自の映画体験”は、劇場で味わわなければもったいない!
◆流麗な“水”の表現… 物語を象徴する、降りしきる“雨”
劇中の天気は全編にわたって“雨”。画面を覆う水が、アクションにさらなる躍動感をもたらしている。主人公の豪脚が地面を蹴り上げると、水たまりが沸騰したかのような勢いで中空に吹き上がる。刃の切っ先は雨粒を真っ二つに斬り、傘地の水滴は衝撃を受けると弾けて飛び散る。水や雨は作品のテーマをも象徴し、ときに流麗に、ときに切なく主人公を包み込んでいく。
◆“色彩の魔術師”の感性さく裂… 陰と陽が交錯する唯一無二の“幻想世界”
さらに、“太極図”が印象的な装置として登場。図上では幾度もバトルが繰り広げられ、ハリウッド大作とは一線を画す趣を味わえる。また、あらゆるシーンに陰と陽の対置、あるいは混交というモチーフが盛り込まれ、光と影の陰影が物語を奥深く仕上げていく。
眩しいほどの鮮烈な色づかいから、「色彩の魔術師」と称されてきたイーモウ監督。本作ではあえてモノトーンを基調とし、中国映画の新たな地平を切り開いている。
【アクション好き垂涎の要素③】さらに“影武者”のドラマが奥深い!
三国志の“あの逸話”を大胆翻案 巨匠が「本当に撮りたかった物語」とは?
もうひとつ、本作の特徴は「主人公が影武者である」という点だ。沛国の重臣・都督(ととく)を守るため、8歳で拾われてきた“影武者”。彼は身代わりの運命を呪い、“自由”という光を求めていた。ある時、本物の都督は影武者に、20年前に奪われた領土を奪還するべく、敵国の将軍を討つよう命じる。「勝てば、おまえは自由の身だ」。常に暗闇の底を歩んできた影武者の、生涯をかけた戦いが始まった。
イーモウ監督は、かねて「影武者についての映画を作りたいと思っていた」と明かしており、本作は「本当に撮りたい物語」と語った念願の企画。入れ込みようは尋常ではなく、製作の日々に“妥協”の二文字は存在しなかった。
・主君の身代わりとなる影武者が、生涯に“光”を当てるため死闘に挑む! ・「三国志」のエピソード“荊州争奪戦”を、脚本に18カ月かけ大胆アレンジ! ・世界的巨匠チャン・イーモウが「本当に撮りたい物語」という悲願の企画! ・辛口批評サイトも“95%支持”の高評価!アジア版アカデミー賞で4冠達成!先に述べた映像美や熱量は世界的にも高く評価され、辛口で知られる米批評サイト「Rotten Tomatoes」では95%の支持率を獲得(5月31日時点)。さらに第13回アジア・フィルム・アワードでは最多の4冠を達成するなど、18年のアジア映画界を席巻していった。
ドラマが重厚であるからこそ、アクションと映像美はさらに輝きを帯び、心に強い印象を残す。詳しく言及できないが、物語は後半に怒涛の展開を見せ、観客を圧倒するかのようなラストへ突き進んでいく。