「今ここにある寓話」ハウス・ジャック・ビルト shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
今ここにある寓話
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ラース・フォン・トリアーのキャリア最高の傑作になりそうな作品だ。「アンチ・クライスト」もなかなかのキワモノで、キリスト教的な世界観を挑発していて、とても面白い作品ではあったが、この作品はその辺りを洗練させた感じだ。キリスト教的な背信行為を開き直って見せ付けた挙句、キリスト教的な教訓に基づいたとても分かりやすいエンディングで締め括る。長いループがくるりと一回りしてとても上手くその輪を閉じて終わる小気味良さ。素晴らしい。彼が持つ道徳や宗教心を取り込み、自らの内部で見事にそれらを超えて、冷めた価値観を軸にした感性が作り上げた作品。ブレイクやグールド等のストック・フッテージ、ボウイ、バッハ、エンディングのレイ・チャールズの音楽も作品の演出を見事にこなし、外部映像や音楽が演技をする妙味を初めて実感した。「殺人者は殺す相手の最期の吐息を嗅ぐ」という台詞がとても良かった。この作品が今年のベストになりそうだ。
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