「面白かった!」ハウス・ジャック・ビルト Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった!
誰でも心に闇を持ち、悪しき感情や妄想、傲慢、卑屈、自己嫌悪は一旦そこに押し込める。そしてその闇の中から「正しく生きたい!」という原初の欲求(光)が生まれ、激烈に発動するのだ。
何でもかんでもSNSに発信し、つまびらかに自分の感情にスポットライトを当てる現代人。心の闇が問題なのではなく、きちんと闇を持たないことが問題だと思う。
閑話休題
ドラクロワもブレイクも、自分の闇や悪魔と葛藤しながら様式を破壊し、欲望を昇華させた芸術家だ。
ところが欲望の彼岸には「享楽」がある。享楽は闇を必要としない。光と闇の境界線がないから、葛藤がまるで無い。だから享楽者は決して芸術家にはなれない。
マット・ディロンにいつも寄り添うブルーノ・ガンツは葛藤を生じさせない。従者のようだった。
いくら生涯をかけて「理想の家」を構築しようとしても芸術が生まれるはずがない。
フイルム写真は、薬品を使って光の中から陰影を浮かび上がらせる、どこか魔術的なイメージを持つ。光と闇の境界線を感じさせる象徴のようだと思った。
ラスト。葛藤も感動も持ち得ない主人公は有機的なマグマではなく、モノクロの最も濃い黒点に同化した。
サイコものでありながらコメディ要素も含む、一筋縄でいかない作品!
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