劇場公開日 2019年10月11日

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「「色」しか見えない」第三夫人と髪飾り Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「色」しか見えない

2019年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

何の映画だったのか・・・。
自分には、色しか見えなかったし、色しか覚えていない。
特に、青い色。

“詩的”な作品であって、実話ベースとはいえ、ベトナムの昔の社会の慣習や「女性の歴史」を映し取ったと呼べるような、リアリズム映画ではなかった。
また、女という“性”がテーマであるが、予想していたほどの“官能的”な作品ではなかった。(ソフトな性交シーンや、女子の猥談レベルの台詞は出てくるが。)
会話はミニマムであり、ストーリーは追えるが、必ずしも具体的な“起承転結”を物語ろうとする意図をもった映画でさえないと感じられた。

エンドロールでは、「カラリスト」がクレジットされていたが、色調が徹底的に統一されている映画である。
さまざまな衣装の色を別とすれば、基本となるのは、白、緑、そして、青。
「白」は、衣装で目立つが、主人公や子供の抜けるような肌の色も。
「緑」は、森深き環境の葉っぱの色で、ボリュームとしては一番目立つ。
そして「青」は、空や水や山陰だけでなく、石や煙など、通常はそれほど青くないはずのところまで青く見える。おそらくポスト・プロダクションで、色調をいじっているのではないか?

上記の全体のベースとなる色に対して、アクセントとして、ポイントポイントで使われるのが、黄、そして、赤。
「黄」は、明かりと、小さい花の色。
「赤」は、血の色。
その他は、子供が着る服の淡いピンク色くらいしか目立たない。

映画の最初から最後まで、ずっと水蒸気でぼんやりと煙ったような世界。
柔らかくて静かで甘い映像が、ひたすら続く。

Imperator