劇場公開日 2019年4月19日

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「写し鏡」僕たちのラストステージ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0写し鏡

2019年4月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

シンプルで王道、ほとんど思った通りの流れにしかならない優等生ムービー。
それでいい、それがいいし、それを観たくて劇場に足を運んだわけだけど、なんだかあまりハマり込めなかった。
終盤になるまで常にしんどさが消えなくて、心を嫌な風につつかれながら観ているようだった。

身体も人気も衰えていく。
老いや時の流れを身でもって実感する過程も、売り言葉に買い言葉の喧嘩も、周りの反応もすべてが苦しい。
冒頭で描かれる人気絶頂期ですらお金やプライベートでチクチクしていて、一番最初に二人の魅力をもっと叩き込んでほしかったなと思う。
そうしたらもっと素直に二人を見守って愛しくなれたのに。

巡業の際に起きる出来事に悉く気分が落ちてしまって辛かった。
終盤になってやっと一息つける。
今まで人の言うなりになってきたオリバーが本当に自分のやりたいことを優先できた瞬間にああ良かったと思える。

コントにのっとった二人の切ない和解のシーンも好き。
周りが何と言おうとどう見られようと自分の身体が悲鳴を上げようと、やりたいからやる、という強い意志が見えたことに心底安心した。
ラストステージはもうちょっと丁寧に観せて欲しかったけれども。
義務のように泣いてしまったけど、鑑賞後は空虚な気持ちになった。圧倒的に感情移入が足りない。

二人の妻が一番好きかもしれない。
ナチュラルに漫才みたいな掛け合いを始める良コンビ。
スタンとオリバーが正反対の人物像なのに倣うように妻同士も見事に正反対なのが面白い。
絶対にデルフォントが嫌いなイーダの態度本当に好き。
見た目も性格も声も話し方も全然違うけど、夫を愛するしっかり者なところは同じ。
最後の妻二人の表情にとてもグッときた。

鏡に映ったショットが印象的。
似ても似つかないスタンとオリバーだけど、相手は自分で自分は相手の精神を持って、写し鏡のようにお互いを見ていたのかなと思う。

実際のこのコンビについて全く知らなかった。最後に流れる実際の映像が楽しい雰囲気満載で笑ってしまった。
昔の芸能に敬意はあれど、その面白さはいまいちよくわかっていない。
あんな爆笑するようなものか?なんて思ってしまいがちだけど、ネタの面白さだけではなくて二人の雰囲気だとかその場の楽しさも加わって笑えるのかもしれない。

ストーリー自体は可もなく不可もなく、予想以上のものは無かった。
しかし結構細かいところで好きな点が多くて、飽きずに観ることができて良かった。
真顔で連発するギャグやお決まりの仕草なんかも可愛い。

劇中で明らかな死は描かれずとも、がっつり死に向かって落ちていくめちゃくちゃ太った人をずっと見ているのが一番辛かった。顎肉を超絶ぽよぽよしたい。
もっとハッピーな雰囲気だと思っていた。
最近あまりにも強く死を意識してしまって怖いので一旦リセットしたかった、なんて変な動機を持ってしまったのもいけない。
良い話であることに間違いないんだけど、ちょっと今の私には合わなかった。しかしなんだかんだ嫌いではない。

ゆでたまご食べたい。ぐりぐりと殻をむいて塩振って食べたい。

KinA