「Boy Erasedというタイトル」ある少年の告白 M hobbyさんの映画レビュー(感想・評価)
Boy Erasedというタイトル
洋画のタイトルが日本語にすると違う事がよくある。
Erasedという、「消し去られた」という強い意味を持つ単語をあえて日本語タイトルにしなかったのはなぜ?
確かに映画の内容は、ある少年の告白なんだけど。
この"Erased"がこの映画の一番伝えたいところだと感じた。
ゲイであるという、一般的にはマイノリティーといわれる性であるが故に、その人の人権も尊厳も奪われるようなシーンが多々ありました。
同じ人間なのに、なぜ、たかだか性が男性or女性に属さないだけで、あそこまで否定されねばならないのか。
それも誰よりも安心できる存在でいて欲しい両親に。
鑑賞中に何度も胸が痛くなった。
同性愛者嗜好を治療するための矯正施設で起こった、実話を元に作られた本作には驚くようなことがたくさんありました。
キャメロンが罰を受けるシーンなんて、ただただ腹ただしく、悲しくなりました。
棺桶置くなんてどんな頭してんのかしら。悪魔なんてホンマにおると思ってんのかい!このアホが!と。
泣きながら兄の背中を最初で叩く小さな女の子が、とても可愛そうだったけど、あの子の涙はどちらの涙だったのか、、、
悲しいシーンが多い中で、グッときたシーンはやはり母親のシーンでした。母親役をニコールキッドマンが演じていましたが、相変わらずお美しい。すごいねスターは。いつまでも輝きが衰えない。と、そこは置いておいて。
①ジャレッドに迎えに来てと電話をもらいすぐに飛んできたママ。迎えの時間でもないのに息子から電話がかかってきてすぐに応答できたのは、母親はうすうす施設のおかしいところに気付いていたのかもとも思った。
施設を離れる際に、サイクスに向かっていった「shame on you! shame on me too」のセリフ。
ど迫力でしたが、母親の怒りが相手にも、自分にも浴びせられていましたね。何者でもないオッサンが何偉そうに施設なんかやっとんじゃい!と。そして、愛する息子をありのまま受け止められなかった、寄り添ってあげられなかった自分にも恥を感じたのだなと。
②ジャレッドとレストランみたいなところで話すシーン。自分がいつものように夫に黙って従ってしまったこと、それによって息子にとても辛い思いをさせてしまったことを悔いていると告白したシーンはただただ涙が止まりませんでした。母親として我が子を守れないなんて、本当に辛かったでしょうから。でも、どれだけ遅かったとしても、人間は変われることを自身で気づけたことがお母さんの一番良かったところだと思いました。
映画の最後に実際のご家族の写真が2枚うつりました。
どちらも笑顔だったことが本当に良かった。
世の中にはたくさんの人間がいます。
その人間をたった二種類のグループに分けられると思うこと自体が私にとってはありえないし、意味がわかりません。
また、本作では宗教がとても影響しているなと感じさせられました。信仰というものは時に人を助け、救ってくれるけれど、人間は弱いからそのことに甘えてしまいます。一人一人が考え、他人の尊厳を邪魔せぬようにいられればなと思いました。
アメリカには70万以上の方がまだこのような施設に入所しているとエンドロールにありました。
自分が自分らしくいられるお手伝いをしてくれるのなら良いけれど、この映画のような施設であれば正直必要のない場所に感じました。