「是が非にも運命を切り開き前に進もうとする母子の執念に圧倒される」母との約束、250通の手紙 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
是が非にも運命を切り開き前に進もうとする母子の執念に圧倒される
このタイトルからはメロドラマに近い印象を受けるが、いざ物語が動き始めると瞬時にその語り口へ引き込まれた。何が何でも生き抜く。そして勝利を掴みとってみせる。なりふり構わぬ生き様が、人生を少しずつ動かしていく。数十年にわたって年老いていく母を演じたゲンズブールも見事ながら、精悍な若者へと変貌する少年のバトンリレーもなかなかのものだ。
メインの母子には冒頭から「虚構」がつきまとう。貴族の末裔だとか、有名ブランドのお墨付きのお店だとか、昔は人気女優だったとか。おそらくこれらの「虚」は、母の思い描く未来絵図を叶えるための手段に過ぎないのだが、これらの言葉こそ、やがて少年が生業とする「ストーリーテリング」の礎として大切に受け継がれたように思える。何が何でも書き続ける。それは生きることの同意語でもある。そうして見つめた時、本作は「物語ること」について描いた重厚な人間ドラマだったことに気づかされるのだ。
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