「現実に降りてきたフィクション」新宿タイガー Kさんの映画レビュー(感想・評価)
現実に降りてきたフィクション
映像が逐一洒落ていて絵になる。それはカメラワークの技でもあろうが、それ以上に被写体である新宿タイガーさん自身の完成度だろうと思う。タイガーさんは生き様そのものが作品であると映画の中でも皆が語っていたが、ビル街でも歓楽街でも路地裏でも新宿のどんな風景にも不思議と溶け込むド派手な色彩美は、きっとご本人が緻密に作り込んでいるに違いない。
一般的にドキュメンタリーを見る観客は、主人公がときに感情的に自分をさらけ出しながら隠されていた秘密を明かすことを期待していると思うが、そういう期待は裏切られる。でもこの作品は期待外れでいい。新宿タイガーさんは現実に降りてきたフィクション、映画以上に映画らしい存在、人を超越した人であるからこそ、万人に愛と平和を語れるのだ。彼に関わる人の方が、いわゆるドキュメンタリーらしく自分をさらけ出していくのが素敵である。
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