「新コンビのプロローグどまり。キャストに頼りすぎて、脚本が浅い。」メン・イン・ブラック インターナショナル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
新コンビのプロローグどまり。キャストに頼りすぎて、脚本が浅い。
MIBの7年ぶりの新作。前シリーズから設定は繋がりつつ、キャストを一新、リセットされているので、前作を知らなくても文句なく楽しい。
前三部作(1997/2002/2012)の、トミー・リー・ジョーンズと、ウィル・スミスによるエージェント"K"と"J"は、ベテランと若手の組み合わせだった。しかしすでに72歳と50歳。ストーリー的にもきれいに完結しているというのもあり、心機一転、新スタートとなる。(ウィルはランプの魔人に・・・)
続編という意味では、エージェント"O"(エマ・トンプソン)やパグ犬のフランク(CV:ティム・ブラニー)は、引き続き登場する。
若返った新コンビは、エージェント"H"(クリス・ヘムズワース)と"M"(テッサ・トンプソン)。同じ1983年生まれの35歳の男女コンビとなる。
MCU"アベンジャーズ"ファンにとって、2人はマイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)と、ヴァルキリー(テッサ・トンプソン)である。アスガルド戦士が黒服を着て掛け合いをしているように見えてしまう。そんなことソニーピクチャーズも承知していたはずで、世界的な"アベンジャーズ"人気に相乗りしてきたと考えられる。
だから、ソーは無事ダイエットに成功したんだ・・・とか余計なことを考えてしまって、MCUからMIBの世界観に馴れるまで少し時間がかかる(笑)。
さらに、上司エージェントの"ハイT"役にリーアム・ニーソン(67歳)が新たに参加。
スピルバーグ製作(Amblin Entertainment)の本作にとって、リーアムの起用は妥当。トミー・リー・ジョーンズが演じた先輩ポジションにあたり、冒頭は"ハイT"と"H"のコンビ芸を期待したが、ちょっと想定外。それよりもリーアムが、またしても後輩の前で亡き者にされちゃうのは、「SW episode Ⅰ / ファントム・メナス」(1997)のクワイ=ガン・ジンである。
MIBは、地球上に生息する宇宙人を密かに監視する秘密組織。メンバーをイニシャルを使ったコードネームで呼ぶところなど、スパイ映画のパロディをベースにしたSFコメディになっている。
今回もグレードアップした、対宇宙人用の攻撃銃(スペースガン)などのスパイ道具が次々と登場。トヨタとタイアップしたレクサスの改造車両は斬新で、オチに"右ハンドル"であることを使っている。
さて今回は、"ポーニィ"という新キャラクターが人気の中心になっている。というか、見どころはそれしかない。
女王エイリアンを護衛していた歩兵エイリアンで、女王が殺されてしまったため、独りぼっちになる。チェスの"歩兵"を意味するポーン(Pawn)から、エージェント"M"が"ポーニィ"と名付ける。それ以来、"M"を女王とみなして忠誠を尽くす。
"秘密組織 VS 侵略者"としてのプロットが弱く、どちらかというとエージェント"H"と"M"のコンビ誕生を紹介するプロローグどまり。宇宙人のクリーチャーも個性がなく、何から何まで、当たり障りのない平凡な出来。
シリーズが続くとしたら、もっと脚本に工夫を凝らした方がいい。設定が魅力的なだけにもったいない。
字幕版より、コメディなので吹替版のほうが面白い。4DX版の効果は、取り立てて傑出したものがなく、3D効果も並レベル。このへんはディズニーやワーナー映画に及ばない。
画角がビスタなのは、IMAX対応しやすいとは思うものの、超大画面を選ぶほどの魅力に足りない。ちなみに2D-3Dコンバージョンは、本編VFXも担当した英DNEG(旧Double Negative)社が兼任している。おそらく本作は2D吹替版が正解。
(2019/6/14/ユナイテッドシネマ豊洲/ビスタ/字幕:松崎広幸)