「AIも選別出来なかった事」AI崩壊 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
AIも選別出来なかった事
公開時主演俳優が、「これがヒットしなかったら日本映画は終わり」なんて豪語してたけど…、
う~ん…。
画期的医療AI“のぞみ”を開発した桐生。一線を退きシンガポールで暮らしていたが、功績が称えられ総理大臣賞を受賞する事になり、娘と共に帰国。
式典の最中、突如のぞみが暴走。開発者である桐生が首謀者として疑われる。
追跡を振り切りながら、システムの復旧とサーバールームに閉じ込められた娘の救出に奔走するが、のぞみが人の命を選別し、大量殺戮を開始しようとする…!
日々進化を遂げるAI。
AIなんてひと昔ふた昔前はそれこそSF映画の世界の事だったけど、今や現実にそこにある。
そんなAIを題材にし、もはや人の生活に無くてはならないものに。
あまりにもAIに根付き過ぎてしまった人間社会、AIがヒトを超える存在になってしまったら…?
AIの暴走/反逆も決して有り得ないとは言い切れない。
着眼点とリアルなAI描写は一定の評価。
エンタメと警鐘を鳴らす和製近未来サスペンス。
それらはいいのだが…。
話自体はベタ。
主人公の逃亡劇。
大切な人物が危機に。
キレ者的な追跡者。
身内の協力者。
逃亡中ひょっこり現れるお助けキャラ。
事件に隠された陰謀。
不審に感じるアナログ刑事。
犠牲者が…。
思わぬ真犯人。でも、すぐ分かる。
最近メジャーシーンでも活躍著しい入江悠監督のオリジナル脚本。
だが、AIの暴走/反逆はまんま『2001年宇宙の旅』や『ターミネーター』。監視システムは『エネミー・オブ・アメリカ』。
邦画でも、システム障害で国中大混乱は『サマーウォーズ』、ハイテクシステムによる違法的追跡は『プラチナデータ』や『踊る2』。『シン・ゴジラ』っぽいスマホ画像やニュース映像も。(黒田大輔演じるエンジニアも喋り方とかまんま『シン・ゴジラ』での役っぽい)
もっとオリジナリティーある作品かと思いきや、何だかヒットもしくは話題になった邦画の寄せ集め。
大沢たかおを始め豪華キャストだが、特筆すべき演者や登場人物は特にナシ。
近未来サスペンス/逃亡劇なので、スケール大きいSFや迫力のアクションを期待すると肩透かし。
今一つスリルも盛り上がらなかった。
主人公が福島出身(しかも郡山!)という設定は思わぬサプライズだったが、郡山市中町に22と言う番地は無い。ちゃんと調べようね…(^^;
それに、福島で撮影なんてしてないようだし…。
主人公はいち天才科学者に過ぎないのに、幾ら何でも活躍がヒロイック過ぎ。しかも、メチャ強運の持ち主。まあ、自分が開発者だから裏をかく事は不可能じゃないかもしれないけど…、典型的なご都合主義。
のぞみ開発は病床の妻の命を救う為。が、認可が下りず、妻は…。
事件に隠された真犯人の陰謀。遂にそれが明るみになり、主人公に問い詰められるも、「テロリストの戯言だ」と一蹴。が、その舌の根も乾かぬ内に、ペラペラペラペラ自白。キレ者なの? バカなの?
陰謀の背後には政府も関わりあり。
ラスト、娘救出も浪花節たっぷり。
AIを活かすも活かせずも結局はヒト次第。
来るAI社会をただ批判するだけじゃなく、警鐘鳴らしつつ、ヒトとAIの“望み”の共存へメッセージ。
しかし、そんなAIも本作が傑作に成り得なかった事までは選別出来なかったようだ。