劇場公開日 2020年1月31日

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「この物語のAIを作ったのも崩壊させたのも人間」AI崩壊 えびせんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この物語のAIを作ったのも崩壊させたのも人間

2020年1月31日
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AIが題材の映画にAI(シンガー)を起用する所がこだわってる(?)なぁと。
原作未読で初日の早い時間に見に行きました。以外と席が埋まっていました。

番宣を見た時、
「AIが人殺しを始めた!自分も殺されてしまう可能性がある中、AIの暴走を止めろ!」
という内容だと捉えてしまったのですが、
「AIが命の選別を企てている、その前に暴走を止めろ!」
が正解でした。しかも政治絡み…。

現実世界が大混乱しているシーン、都会ならそうなり得るけれど、「取り残された田舎」はその頃どうなっているんだろう、と少し気になりました。本編には必要ないですし、あの世界での田舎は超過疎化で住民も居ないでしょうけれど…。(小さな漁港がちらっと出てくる他は田舎の様子は描写されてない?)
研究施設の外のデモ運動、既視感がありますね。日本人はあんなに活発なデモを行うのでしょうか。人口激減と不景気の怒りがそうさせることも有り得るでしょうか。あとは垂れ幕が電子機器でデザインされていて細かい所も作ってあるなぁという感想です。
ストーリとしては、誰が真犯人なのか初っ端から分かってしまい、どのように暴かれるのかを予想しつつ見ていました。最後にその犯人が胸の内を暴露した時、後ろの演者たちが「はぁ?」という顔をしたのが面白いです。
「のぞみ」の暴走を止めるために、船を使うところまでは現実的ですが、東北の冬の海に飛び込んで、運良く漁船で助けられなければこの物語は終わりでした。途中、人情刑事が登場しますが、彼らの古臭い(いい意味で)行動とインテリ集団との攻防がどちらも優秀だし邪魔だしで見どころだと感じました。
「人的ミスは想定内」なのにAIのミスは想定外な所が、個人的ツッコミポイントです。警察側のAIは学習が足りてないんじゃなかったか。なら想定すべきではないのか。

結局、最後は人間が勝利を手にするのですが、それは人間が作った空想の話です。AIは人間の想像を遥かに凌駕するような事件を起しかねない。トントン拍子に「正解ルート」を辿ることもなく、人間は「地球の主人公」から引きずり落とされるのでしょう。

AIに愛はあるか?
AIはヒトを幸せにできるか?

最後、「のぞみ」は「自我」を取り戻し(cv松嶋菜々子)ます。
「正解ルート」を辿った物語は平和を取り戻しますが、AIの暴走が完全に止まったと言えるのでしょうか。

鑑賞後は長めの「世にも奇妙な物語」を見た感じです。

えびせん