劇場公開日 2020年2月7日

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「犬が白けりゃ尾も白い」犬鳴村 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5犬が白けりゃ尾も白い

2020年2月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

犬鳴の長いトンネルを抜けると廃村であつた。
地図から消され都市伝説となった村、犬鳴村。

奇妙な風習を持つ村、忌まわしき過去の業、混ざってはいけなかった血。
軽々しく足を踏み入れたことで目覚めてしまった、呪いと因縁の物語。

犬鳴村で何が起こったのか。
呪われた人の変死のわけとは。
森田家が抱える恐怖とは。
奏はなぜ「視える」のか。

設定だけで昂ってしまう上にしっかりとしたドラマと謎解きが組み込まれていて本当に面白い。
じっとりと濡れた雰囲気の漂う、胸熱なホラー映画だった。好き。

奏の小児患者のエピソードと犬鳴村にまつわるエピソードが並行して進むつくりが面白い。
「臭いものに蓋をする」隠匿体質の人間が生んだ悲劇。
隠しても取り繕っても血は誤魔化せない。好きです。
遼太郎くんの将来には不穏な期待しかない。あのスローな喋り方が不気味さを増長していて良かった。

自分がどう生まれてきたのか。
自分のルーツどこにあるのか。
自分の先祖は何をした人物なのか。
自分の親は本当に親なのか。

改めて考えてみると面白い。
時を超えて繋がる命の描写があまりにもロマンに溢れていて、少し泣いてしまった。好きだよ。

しかし、祖父母の成り立ちは地味に気持ち悪い。ほとんど兄妹みたいなものでしょう?
そういうところなんだよなあ。血縁に隠された仄かな後ろ暗さの要素。好きでしかない。

興味深いストーリーはもちろん、恐怖もしっかりと味わえる。
おどろおどろしい舞台の雰囲気だけでビクビクできるし、モヤのかかったような霊の描写は多少チープさはあれど面白い。
墜落フラッシュバックのシーンで心臓爆発した。完全に驚かしに来てる。好きだなぁ。

「コノ先、日本國憲法、通用セズ」の意味がぐるっと反転する瞬間が好き。
摩耶のバキバキの身のこなしが好き。
犬鳴村の中よりもトンネルの中の方が実は恐ろしい。
完全に巻き込まれてしまったマイルドヤンキーに起こる、電話ボックスの変がたまらなく好き。

欲を言えば、人体破壊の様をもっとしっかり観たかったと思う。
せっかく人体が傷つくシーンがあるのに、ゴア表現があまり見られなくてもったいなく思ってしまった。
オカルト表現は最高だから全然良いんだけども。
なまじ攻撃的なシーンが入るものだから妙に期待してしまうのよね。

水音がトラウマになりそうな映画だった。
きっとこの映画も日常に響いてくるのでしょう。
狂犬病の要素も少し入れているのかな。
発狂するババアはいつだって大好きです。

それにしても、今、Jホラーは躍進の時に来ているんじゃなかろうか。今後も骨の太いホラー映画がたくさん現れますように。
シライサンと犬鳴村が立て続けに公開された2020年の日本に万歳!

KinA