天気の子のレビュー・感想・評価
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命の重さ
なんだこの身勝手なエンディングは!!
と、憤ってみたものの、よくよく考えるとそういう事ではないように思う。
存在だとか自己犠牲だとか、同調圧力だとか、思いやりだとか、忖度だとか…周囲に波風立てない方法は色々あるけれど、それに潰されるなんて事があっていいわけない!!
と、言われてるような気がした。
彼は世界と引き換えに彼女を選んだ。
東京23区が水没しようと、あなたの居ない世界よりはいいと。
とんでもなく自己中心的な決断ではあるけれど、彼はそれらを背負う覚悟を決めた。
一昔前に耳にした「1人の命は地球より重い」との標語を思い出した。
大多数はこの考え方は素晴らしいという。だが現実はどおだろう?
クソみたいな理由で人は死ぬ。
自分の命も他人の命も、風に舞う木の葉よりも軽く扱われているような気がする。
その標語を建前ではなく、実行したのが彼なのだと思える。
それと真逆のメッセージも。
あなたのその選択によって、世界が変わる覚悟がありますか?と。
人生が選択と決断の連続なのは言うまでもない。その都度どっちを選択しようとも、自分の世界は一方向に流れていく。
そして、その選択は指先一つで世界に周知される事もあるし、人の命を絶つ事だってある。
時間は戻ってこない。
水没した東京が水没したままのように、失った命は返ってきはしない。
その十字架を背負うのは、紛れもない自分だ。人生が180度変わる事だってある。
その世界を生き抜く覚悟がありますか?と。責任がつきまとい、時にそれは一生かけて背負う場合だってありはする。
そういう自らの決断がもたらす影響を作品に込めたのかと感じた。
主人公たちは、思春期真っ只中だ。
家出をしネカフェで過ごす。
生活費の為に売春しようとする。
驚くほど手軽に入手する銃。
容赦のない大人からの暴力。
児童相談所
彼らを取り囲む現状は、今の時代とそう遠いものではないように思う。
彼らは逃げるという選択肢しかない。
善意ある暖かい手が差し出される確率は高くない。
彼は銃を手にし発砲する。
子供達を取り巻く環境がこれでもかってくらい投入されてる。
現実から目を背けないでと言わんばかりだ。
天気の子という表題には、幼子をイメージする。
彼らが突如降り出した雨の如く泣いていれば、周囲はあたふたするしザワザワもし、穏やかではない。
だけど、一度、彼らが太陽のように笑うだけで周囲の温度が上がるように暖かで幸せな気持ちになる。
天気と同じで、大人の都合や事情を汲んではくれない。コントロール出来ないものをコントロールしようとするから悲劇が起こる。
そんな多様なメッセージを感想として抱いた。
とてつもなく練りに練られた脚本に思える。作画は言うまでもなく素晴らしいのだけれど、アレはタイアップなのだろうなぁ。作中に描かれる実名広告の商品に、若干萎える…。
めちゃくちゃ泣きそうになった
今回天気の子を見て
天気の子は評価が分かれる作品だと思いました。
震災によって家族を失った方々はこの作品の
写っていない雨(震災)によっての被害者に感情移入し、良くは思えないでしょう。
しかし、歴史で考えれば元に戻っただけ。
主人公が悪い訳ではない。
一人は皆の為にということばがあると思います。が、そこだけ見てはいけない
皆は一人の為にという言葉もあるように
主人公らだけに責務を追わせるのが正しいか
を考えて見ると主人公らが取った行動は非難を浴びる内容ではない。
しかし、他人に迷惑をかける主人公に共感出来ない身勝手だという人が出るような気もします。
だから意見が分かれる作品です。
絵の綺麗さや音の響き
曲のマッチその他全ての項目で
満点な出来なことは間違いないです。
自分が好きな人が巫女になったら果たして
それを受け入れられるのか。をまず考えてみてください。
主人公に感情移入することが出来たのなら
自分(レビューを書いてる筆者)も同じことを考えます。賛否分かれる内容なのは事実です。
しかし、それでも。まずは見てみてから。
判断してください。
雨の音の響き
夏の空に浮かぶ積乱雲
キャラクター達の表情、考え、行動。
本当に素晴らしい出来でした。
地味に嬉しいのは劇場で貰えたスマホの壁紙画像
最後に、批判を見て見るのをやめるというのはやめた方がいいです。自分の目で見て
各々の評価をした方がいい。
この作品の評価は☆ではなく点数で
表すと100点ですから。
追伸
ひな、可愛すぎかよ
ジュブナイル的ボーイミーツガール
ビジュアルは素晴らしく美麗。あ、あそこだ、とすぐ見当がつくほど、現実をリアルに写した背景、雨や水のテクスチャー。リアルさと空気感はアニメトップクラスで、そこにエモーショナルな音楽も加わって、世界に没入するのが心地よかった。
ストーリーはまあ、言ってしまえば、世界と愛する人どっちを取る?という、よくある恋愛ものの定番だし、しがらみをはねのける純粋な愛、というのは、多分一番中高生世代の琴線に触れるのだろうなぁと…。
恋愛体質の薄いオバちゃんにはちょっと青臭すぎました(笑)
今時のリアルな少年少女青年らの孤独ややるせなさを反映させているのも解るんだが、感情移入出来るほど掻き込まれてもないし。
都合良く思い通りになんてならない現実を、皆自分の足で目で向き合って、この大地の上で生きていこう、というようなメッセージは感じられた。
季節も一致してるし、気になっているなら旬の今見るのがベストなのでは。
今まで一番面白かった
人生で初めて同じ映画を映画館で2回見た。
歳を重ねることで、自分の感情を論理的に考えるようになった。
自分の感情を他人に説明できるように整えるようになった。
でも、子供の頃はそうじゃなかった。
ただただ好きになったり、嫌になったり、ただただ感情的だった。
目的もなく、意味もなく、何の脈絡もなく、人の大切さや、色々な大切さが分からなかった。
今考えれば、そんな自分は情けなく、恥ずかしく思う。
でも、そんな自分がいたから今の自分がいる。もっと成長したい。もっと思いやりを持ちたい。もっといい人間になりたいと思う。
この作品は、不器用で、幼稚で、共感できない場面があるかもしれない。
でも、それ以上に純粋でまっすぐで清々しかった。
もう今の自分は感情的には慣れないが、昔の自分は自分で良かったと思えた。
こんなに色んな思いが溢れる作品は初めてだった。
これからの新海誠監督の作品を楽しみにしています。
アオハルて素敵だね
徹底したこだわりが素晴らしい作品を生む
リアリズム、音と絵が連動したテンポ、そして光、徹底してこだわり続けた結果がこの作品に集約していると感じた。
どうしても前作と比較してしまうけれど、今回の方が断然オリジナリティが溢れていて、非常に面白かった。絵も前回を上回るぐらいの質と演出で、予想以上に魅せられた。陳腐な台詞だと分かっていても、傑作だ!と言いたくなる。
正直、アニメで忠実にリアルな都市を写実的に描いたところで、どんな意味合いがあるのかと疑問しかなかったけれど、そのリアルな表現に架空なものを掛け合わせることによる世界観は、無敵に感じた。そのリアルを追求というのが半端じゃないから、それが作品そのものの個性になり得ている。これほどまで素晴らしい絵ならば、変遷激しい都市風景において、令和元年、そのアーカイブにもなり得るのではないかと思ってしまった。とにかく、絵はすごいと思う。
オリジナリティあふれるファンタジックなストーリーも非常にいい。
胸の中にドン!と居座ってくれる映画
主人公が反社会的行動で突っ走る!
観ていて爽快な気分になれました。
その理由が、大切な相手の事を想っての事ですから
共感できますし、応援したくもなりますよ。
それに特に花火のシーンは、おおっ!と声を出しそ
うになってしまうくらい綺麗で素敵でした。
前作が今も胸の中に残り続けている様な状態ですが
、更にこんな素敵な映画を観ることが出来て感謝し
かないです。ありがとうございます。
胸が詰まるようで苦しいですが、嬉しい苦しさです。
だから私は☆5です。
映画って、その作品の中の世界で楽しむものだと思
います。
だから、家出の理由?拳銃がなぜあそこに?発砲し
たのに騒がれない?なぜラブホ?等を現実の世界の
事の様に気にすることは無意味では?
それに、主人公達の内面が描かれていないから感情
移入できない?
全てを言葉や絵で伝えてくる訳は無くて、観ている
人の脳内で自由に想像できるからこそ面白い、そう
思います。
映画館を出ようとしたら、外は警報が出るほどの大
雨でした。まだ作品の中から抜け出せていない様な
感覚になってしまい、暫く動けませんでした。
これから雨が降っても、上がっても2人の事を思い
出すことになると思います。
今日、2回目の観賞に行きます。
さすが新海監督
次回作に期待したい。
良かった点
今作も非常に美しい背景描写で、一気に引き込まれた。特に雨の描写は新海監督の作品でしか観れないような美しさ。それだけで感動した。また、声優も非常に良かったと思う。本田翼が不安視されていたが良かったと思う。
悪かった点
一方でストーリーとしてはそれなりには楽しめたが、粗が目立つ作品だった。他の方も言っているように帆高はなぜ家出をしたのか、なぜゴミ箱に拳銃があったのか、挙げだすとキリがなさそうだ。想像力が足りないと言われそうだが、帆高の家庭の描写が何一つないのに、家出の理由を詮索をするには無理があるし、いくら歌舞伎町とは言えゴミ箱に拳銃があるような街ではない。また今回のヒロイン陽菜に至っても、15と18の差くらい現実的に考えればわかる。流石に中3が高3と偽るにはかなりきつい。よくマクドで働けたなと思うくらいだ。
そして、何よりもあれだけ犯罪を犯していて自分らのしている重大さがわかっていないのだろうか。トラックに落雷させ、そこからラブホに逃げ込んみ笑った時もそうだったが、自分が他人に被害を与えているというか考えが欠如していて、15、6歳でそれもわからないのかと少し悲しかった。
あとは他の方が言っているのとほぼ同じ意見だ。
悪かった点ではなく、気になった点ではあるが、3年雨が降り続いて東京が沈んだ時「もともと200年前までは東京はこうだった。元に戻っただけ」というような台詞があったが、確かにそうかもしれないが、全くもって的外れな台詞だなと感じた。
個人的にはこの映画を通して、何度か君の名は。を思い出した。前作の登場人物が出ていたからではなく、単純に帆高と陽菜を観て前作を観させられているようだった。音楽も前作同様RADWINPSのため、よりそう感じた。良くも悪くも前作に囚われているのだろうか。
まとめ
映像美は言うまでもなく、ストーリーはそれなりには楽しめたが、感情輸入は難しく粗も多い。期待せずに観に行った方が感動できるかもしれない。
アクエリアス
見終わった後の感想は、
何これ、、
クライマックスに向けての盛り上がりのシーンから、
何これ、、感はあったけれど。
教室の中で、一枚ガラスを通して
大騒ぎする若者達を眺めて、
一通り大暴れして満足した彼らが跡形も無く出ていってしまって、
教室に一人取り残されたような感覚。
予告の時点から
売れに売れた「君の名は」の第2弾を作らされた感があって、嫌な予感はしていたけど、
とても綺麗な映像、
いかにもな音楽をここぞとばかりに大音量で流して
力技で感動させようとしてくるのが、
どうにも押し付けがましくて。
友人の映画監督が
とある企業のPR映像を作ったので見せて頂いたら、
とても大事なシーンで過剰な演出が入っていて
雰囲気が台無しになっていたので、
何故あんな風にしたんですか?と聞いたら
その企業のトップに、その様に変えろと言われて
致し方なく変えたんだと答えたのを思い出しました。
それとは別に、何か大事な芯の部分がすっぽり抜け落ちてる感じもして、虚しくもありました。
それでも雲の描き方や
空や広がりが本当に美しくて、
一番の感動ポイントであろうシーンにはギュッと心を掴まれました。
そして
新海監督の過去作のすれ違いだったり
全てがうまく収まらない物哀しさを感じるラストが好きだったんですが、
環境、政治や世界情勢など未来に不安を感じるニュースばかりの昨今に
そんな現実を叩きつけられても前向きに生きていこうとする希望を感じる終わり方は、良かったのかなと思います。
そう言えば、
水の描写が綺麗でアクエリアスを飲みたくなりました。
やはり絵と曲は素晴らしい
新海監督の一番の特徴は、繊細な絵だ。
すごくリアルで、現実よりも美しい。
また前作から引き続き、RADの曲は映画の内容に歌詞が沿っていて映画を盛り上げてくれる。
ただ同じメンバーでやっている以上仕方ないことだが、「君の名は」の二番煎じ感は否めない。
ストーリーに関しても、主人公の家出の理由、なぜ晴れ女になったのか、拳銃がなぜゴミ箱にあったのか、など疑問点が多く残った。
前作ではその辺の裏付けがしっかりしていたが、今作では取ってつけたような理由が多い印象を受けた。
今後は今の形にこだわらず、新海監督らしい作品に期待したい。
最高傑作
売れた映画の二作目は大体駄作の法則と、バッドエンドらしいという噂があったので期待半分、怖いもの見たさ半分で観てきました。
結論から言うと、アニメ史に残る傑作の一つです。
千と千尋の神隠しを映画館で視聴したとき並みの衝撃を受けました。
起承転結がしっかりしていて、笑えて泣けて安心できる、物語としての完成度が高い、映像のクォリティは言わずもがな昔のジブリ作品並みに繰り返して視聴できる完成度、映画館を出たときは世界観にどっぷりつかって放心状態でした。
前作の君の名は。も映画館で視聴しましたが、ストーリーがいまいち響かなかったので60点くらい、一回ネタバレしたら後半の黄昏時に再開するシーンを摘まみ食いすれば事足りたんですけど
こっちは雨と真夏という情緒あるシーンが多いのでこの季節に見るには最高でしょう。
レビューの平均点がいまいち控えめなところを考えると前作が好きな層にはピンと来なかったのかも知れませんが、
おそらくは前作が主人公とヒロイン双方の視点で展開されたダブル主人公ものに対して、本作は主人公視点で展開されて、ヒロイン視点は殆どない(設定の殆どがネタバレ)のが一因かと思われます。
前作のヒロイン三葉みたいに主人公と惹かれあうまでの過程を描くこともなければ、内面の描写も殆どありません。
男向けの作品ではお馴染みの王道ヒロイン。
個人的には好感の持てる主人公がいて、ヒロインがいて、後は冒険と感動という王道が好きなんで大満足なんですけど
前作ファンの多くが期待したのは女の子が主人公の冒険活劇orラブロマンス、要するに少女漫画やジブリの世界観。
残念ながら少女漫画ではないですし、さほどファンタジーでもない、バリバリの野郎向けのラノベ展開です。
それと主人公の心理描写が理解できないってコメントが多いようですが、確かに行動が極端な割に説明はありません。共感は難しいんじゃないでしょうかね。
でも、セカイ系(エヴァとか)の主人公って基本そうですし、新海誠の特色の一つでもあるので、個人的にはマイナス対象にはなりません。
前作の、君の名は。が、本来なら新海監督ではやらないような、極端に大衆向けすぎる作風が旧来のファンからは不評でしたし、もともと灰汁の強い監督なので、前作のヒットで発言権が増したら癖が出て前作からのファンは離れていくだろうと予想していましたが、案の定。
前作は監督の持ち味が封殺されて、ほぼ名義貸し状態なのに異常に持ち上げられてるのが無念だろうなと思ってたので、正直真っ当な評価が出るようになってほっとしてます。
前作は東映が天才的な描画力はあるけど、売れる作風じゃない監督に売れ線をごり押ししただけなんで売れて当たり前なんです・・・。
一発屋とかじゃなくて、売り方を知ってる東映が100%手綱を握って天才を動かしたら当然売れます。
でも前回のヒットで新海誠の名は大きくなりすぎて、東映が100%コントロールできる存在じゃなくなったので二作目は監督の我が幾分か通る、そして元々大衆受けしない作風なので客が離れる。
ここまでは完全に既定路線です。
正直、バッドエンドで二度と見るか!ってな作品になるかと思いましたが、流石に最後の一線だけは守りましたね。100%の新海誠は旧来のファンでも正直きつい
天才の癖を抑えつつ見られる作品を作る。映画屋とクリエイターのパワーバランスとしてはここら辺がベストかなと。
帆高を応援するには、想像力が必要なのか。
描かれる景色は見覚えのあるものばかりで、
とても美しい。
正直、またか、と思った音楽も、
やはり映像とマッチして景色を広げていた。
ただ、どうしてもわたしはあの世界に入り込めなかった。
わたしは最後まで、帆高のことを応援できなかった。
景色や描写はリアルなのに、
帆高の見ている世界は違和感だらけで、
あえて描いていないと思われる家出の理由もわからず、
共感できずに最後を迎えてしまった。
とても若い純愛と、自然を操るもはや魔法に、
心がついていけなかった。
人一倍の想像力がないといけない作品だったのか、
自分の想像力が足りないのか、、、
梅雨明け前の、じとじとした帰り道に思った。
愛にできることはまだあるかい?
更なる飛躍を果たした名作
今回はシネマサンシャインで朝一で見てきました。観客の割合は男女半々、年齢層も幅広かったです。
新海誠作品は前作はもちろんの事、デビュー作から後追いで見てきました。前作は劇場で鑑賞、中盤からは涙腺を緩めながら見ていたのが記憶に新しいです。良くも悪くも過去の新海作品の殻を破ったエンタメ性に特化した作品という印象でした。
そんな中で本作はというと、良い意味でエンタメ性と新海誠の作家性がバランス良く融合した作品になっていました。
まず素晴らしいのが、新海作品おなじみの風景描写。新宿歌舞伎町から始まり、池袋、秋葉原、田端、お台場などなど都内のあらゆるスポットがリアリティを持って描かれています。それら実在するスポットにアニメーションならではのマジックが加わり、これが見ていて気持ち良い! 雨の雫が落ち、波紋を広げる様だけでもそのクオリティの高さは折り紙付き。
加えてヒロインのヒナちゃんがもういじらしいくらい可愛すぎて、それだけでももう見る価値ありです。
10代の主人公2人の水々しい青春はもちろん魅力的ですが、意外に良かったのが周りを固める大人達のドラマ。彼らの背景がしっかりあるからこそ、主人公達が起こすドラマが引き立ちます。
そして何より良かったのが終盤に下す主人公達2人のある「選択」。ネタバレ避けて説明するのが難しいですが、前作と異なりきっちり「新海誠作品」らしい「◯◯◯系」ならではの展開になっていました。それでいてエンタメとしてもバランスの取れた着地点が用意されてます。このエンディング、前作でモヤモヤした思いをした往年の新海ファンも納得できるんじゃないでしょうか? 2人が取った「選択」とその「代償」は感慨深いものがあります。
色々言いましたが、大衆エンタメとしても新海誠作品としても大変満足できる映画に仕上がってました。前作であれだけヒットを飛ばしての次回作として、文句なしのクオリティといって良いでしょう。
間違いなく、今見てほしい一作です!
結論は「だいじょうぶ」
本作は少年少女が自己の運命を選択する物語である。周囲に流されず帆高が駆け抜けた選択を、それに応えた陽菜の選択を誰が責めることができようか?
本作を鑑賞して私は『魔法少女まどか☆マギカ』を想起した。惹き起こされる災厄に立ち向かう少女、周囲には決して理解されえない少女の哀しい運命、親しく交わった者だけが洩らす「こんなのってないよ」という嗚咽・・・『魔法少女-』では、ヒロインは自ら犠牲にして全世界の平穏を希求するのである。
対して『天気の子』は? アンチテーゼであるかのように、2人はお互いの存在を感じ合える世界を選んだ。世の災厄は除かれず、人々は激変した環境に適応し生きている。公益ではなく自身の愛を選んだ帆高、“天気の巫女”の役割を放棄して帆高の愛に飛び込んだ陽菜は果たして“2人の関係ばかり考え、世間の被害を鑑みない身勝手な男女”なのだろうか?
私はけっしてそうは思わない。なるほど、ヒロインが愛する家族や友人との別離を選択し、自らの功績を誰が理解するでもないのに世界のために身を捧げるストーリーは実に美しく、その英雄的犠牲精神は何人も冒瀆することはできない。だが、それは絶対的な価値観ではない。むしろ現代2019年の日本で、いったい誰がそれを絶対善として実践できよう?陽菜は一旦それを決心するのである。愛する帆高に「この天候が止んでほしいと思う?」と問いかけ、何も知らぬ相手が素直な気持ちで肯定すると、絶望を浮かべつつも大切な弟を託して自らを犠牲とする昇天を決意するのである。だが、それは行動原理が“愛する帆高のため”であるがゆえに、彼が追ってくると陽菜はそれに応じた。わが身さえ現実味のない雲の上で陽菜はプレゼントの指輪を地上に落とし、身を震わせていたではないか。それこそがリアルではないか?少女が選ぶのは漠然とした“世間”ではなく“強く惹かれ合う異性”であるのは当然の帰結であり、明快でリアルな回答であろう。
帆高は一見幼稚なようで、強い主体性を秘めている。内なる良心を指針とし、彼は流されない。陽菜をスカウトマンから救うとき、警察を振り切って彼女を追い求めるとき、恩人である須賀へさえ拳銃を向けるとき、彼の意志は一度だって揺るぎないのである。目的のために手段を厭わない姿勢は時に人の批判を受けるであろう。“常識的な大人”からはまるで理解されえないがゆえに、彼は駄々っ子のように反発する。対話でコミュニケーションを持とうにも“共通の言語”を帆高と大人たちは持たない。反発心の象徴として、彼は拳銃を握り、引き金を引くのである。人生経験が浅く、権力で押さえつけようとする大人たちを信頼できない帆高。かれが果たして、その大人たちの集合体である“世間”のために愛する陽菜を犠牲にするルートをそのまま受け入れて諦められようか?帆高はそうはしなかった。須賀、夏美、凪をを犠牲にしてでも大切な人を守り抜いた。「私が帰ったら、また天気が」と叫ぶ陽菜に「もういい!お前はもう天気の巫女なんかじゃないんだ。天気など狂ったままでいい。俺がお前がいる世界を選ぶ」と答える帆高のまっすぐな気持ちをどうして身勝手、幼稚だと批判できようか。
帆高はあとで自分たちが“世界を決定的に変えた”と自責を吐露するが、私はこの認識も的を射ているとは思わない。彼が拒絶したのは“一人の少女を代償に平穏なる日常を享受する世界”であり、選んだのは“狂った天候の中でも、特定の誰かを生贄にすることのない未来”であり、私には帆高の選択がよほど真っ当な感覚に思われるのである。確かに須賀の「誰か一人の犠牲で狂った天気がまともになるなら、誰だってそれを望むだろ」という考え方は実にリアルで説得力があるがその分恐ろしく、そして極めて正義に反した“マジョリティ”の発想なのである。
帆高は葛藤と自問自答の中で、ついにラストで自己の選択を心の底から肯定する。結論が“だいじょうぶ”とはどういう意味か?私にははじめ理解できなかったが、EDの歌詞がそれを教えてくれる。崩れそうな陽菜に「だいじょうぶ」と強がりを言わせるのではなく、自分が支えとなることに生きがいを見出す帆高。そのきっかけは、坂の上で雨空に手を合わせる陽菜。他の方のレビューにもあるが、天気の巫女としての力を喪失したはずの、陽菜があの場所でもし3年間晴天を願い続けていたとしたら・・・?それは涙を禁じえない美しい心ではないだろうか。
確かに「僕たちはだいじょうぶ」とは賛否の別れる結論である。
まだまだ私はこの意味を十分に理解できたとは思わない。
それでもなお、私は安易な自己犠牲を称揚せず、少年少女のまっとうな選択の物語を脚本した新海誠監督に敬服するばかりである。
見当がつかないのは、陽菜が年齢を偽った理由だ。「私は早く大人になりたい」という台詞や、容易に年上の異性を部屋に上げられない家庭の事情がヒントになるのだろうか?
瀧と三葉について。『君の名は』の2人は2021年の東京で再会したはずである。『天気の子』ではその期間、東京に雨が降り続けている。果たして2人は雨の降りしきる階段でお互いの名前を問うたのか?この再会シーンを変更させてしまったのなら、穂高と陽菜は確かに“世界を決定的に変えてしまった”といえるのかもしれない。
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