劇場公開日 2019年7月19日

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「持ち味である繊細な心理描写は失われている」天気の子 saicacoolaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0持ち味である繊細な心理描写は失われている

2019年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

幸せ

大まかなストーリー構成要素は前作と同じであり
前作の試みにより成功が約束された構成である。
作品として新しい試みは薄く、商業的な意味が大きいように思う。
しかしこの対比は批評としてはややずるいかもしれない。
そもそも前作の成功が同一の作者によってなされたものであるからである。
このストーリー構成の創造的価値は揺るがない。

ここではもう少し細かな構成に目を向ける。

この作品では自己陶酔的な大人びた思考はみられず
十代の子どもの社会や大人に対する抵抗と無力さが素直に描かれている。
一方で主人公の少年と少女のおかれた境遇、特に家庭環境については深く触れられておらず、彼らの痛みを本当には理解できない。
見ているものに痛みを伴わせるような負の要素は排除されているのである。
大きな感動や感情移入はできないが、見終わった後の清涼感がある。
作者監督の持ち味である繊細な心理描写は失われ、体裁の良いテレビコマーシャルのようである。
不相応な自己陶酔をなくしても、痛みや悲しみの描写をなくすべきではない。
彼らがどのようにして出会うことになったのか、助け合い、互いを思うようになったのはどうしてなのか、少女は何を祈り願ったのか、少年が何故あんなにも必死に彼女を助けようとしたのか、その答えを与えられずにいる。
それ故、芯を欠きふわふわと宙に浮いているのである。

saicacoola