「青春、純文学、そしてファンタジー。」天気の子 サンテさんの映画レビュー(感想・評価)
青春、純文学、そしてファンタジー。
いつの間にか、16歳の頃なんて覚えてなかった。
そんな事を考えた作品だった。
主人公は16歳の高校生。
行く宛もないまま東京へやってきた少年。
東京へ来たはいいが、雨。
また翌日も雨…
16歳の家出少年にとって、東京は雨のように冷たい。
居場所も仕事もお金もない。
少年の心を打ち砕くようなその雨は降り止む兆しもなく…
そんな時、とある少女に出会う。
とある少女の差し出したハンバーガー、彼女の何気ない優しさが少年の雨模様に一縷の光を浴びせる。
雨が降り止み、太陽が顔を覗かせたような…
後日、少年はある事件に巻き込まれる。
そして、ある事実を目の当たりにする。
起こっている事を理解する間もないまま、物語の風呂敷が広がっていく…
少年はこの雨が止まない街で光を掴かみかける…
都会に夢馳せたあの頃、何かに、分からない何かにズルッと引き込まれた10代、大事な何かを、脆い事も忘れ、力一杯抱き寄せようとしたあの青春…
少年が東京で出会った須賀という男。須賀の従姉妹は仕切りに須賀と少年が似ている。と呟く。
須賀はきっと、少年と似ているのだろう。
大人である須賀の視点と16歳の家出少年、この対比によって何かを忘れた大人達もこの物語の中へ引き寄せられるのだろう。
純文学のようでファンタジーなこの作品は、16歳の頃を忘れた大人の僕達へ分かり易いのだろう。
ただただ、真っすぐで、不器用で、無鉄砲。
脆くて、弱い。
今にも壊れて無くなりそうな脆さ。
その中にある無垢で弱々しい純な輝き。
少年とあの頃の自分を無理やり重ねてしまう。
多分そこには、もう戻れないあの頃への憧れと呼び覚まされる、引き寄せられる何かがあったんだろう。
そんな少年に、ガンバレ!と祈る自分がそこにいた。