劇場公開日 2019年7月19日

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「素晴らしい映画作品だがモヤッとしたものが残る」天気の子 ch229さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5素晴らしい映画作品だがモヤッとしたものが残る

2019年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

いやー新海誠作品の風景描写はとにかく凄いですね。
現実の世界がこんなにもダイナミックで表情豊かで美しいなんて、新海誠に言われるまで気づかなかった。そのくらい凄い。
フロントガラスの雨を車のワイパーが拭う描写とか、ほんと細かいとこまですごいこだわりを感じる。
空撮の花火のシーンなんかもう圧巻です。
なんというか、この風景の迫力と美しさ溢れる映像は、それだけでとにかく劇場で見るべき積極的な理由になる。大スクリーンで見てこそ、これは映画としてとても大事なことですよね。

さて映画の内容についてですが、息苦しいこのご時世に、必死で生きる若者のお話としてとてもおもしろく、観てて気づけば何度か涙が流れていた。

とてもいい映画だと思う。

終わり方を除けば。

いや、ツイッターなどで正義感溢れるインターネット自警団のみなさん(笑)が、主人公のやってることは犯罪行為だと騒ぎ立てているようなことを言いたいわけではなく。

私だって高校生の頃に恋した女の子にもしものことがあって、助けることができるならなにを引き換えにしてでも助けたい。

彼にはそれを選択する機会があり、それを行使しただけなのだ。私でも同じことをする。

いや、同じことができる自分でありたい。

だからそれはいいのだが、それによって引き起こした背負うべきものの重さに対して「これで良かったんだ」と主人公が思うのはいいんだけど、それを捉えるスクリーンの視点が客観性に欠けるというか、ちょっと無邪気すぎるというか、めでたしめでたし、という雰囲気で美談として強引にまとめてしまおうとしていて、もう、そういうことにしとけ!っていう圧力が凄い。

RADWIMPSとかもう必死。美しいメロディーと歌声で、これはいい話だった!そうだよな?わかったな!?という方向に持っていこうとしていて、その雰囲気を醸成することに加担してる。

物語の途中では、なんかよくわからんけど気づいたら涙が流れていた、という素晴らしい映画にしか持ち得ない体験を与えられる稀有な作品であるにも関わらず、最後はなんとなく雰囲気で誤魔化そうとしているのである。これはちょっといただけない。

昔の名作アニメ「うる星やつら」のノリなら、シリアスなハッピーエンドと思いきや、大変なことになって割りを食った人たちが怒りにまかせて包丁持って追いかけてきて、逃げ去るところでチャンチャン、というベタでお約束な感じの最高のオチになると思うのだけど。

つまりこの幕の閉じ方はこの作品の雰囲気にはそぐわないというか、ご都合主義でもいいから最後は結局神様が許してくれたみたいなことでも良かった気がする。

ということで、視聴後から時間がたつにつれてモヤモヤしたものが具現化してくる感じで、スッキリと「面白かった!」とは言い切れないもどかしさは残る。

ここがもっとうまくまとめられていたら、「君の名は。」に匹敵するくらいの名作になったのではないだろうか?

それを割り引いても1800円と貴重な自由時間を捧げるに値する作品だとは思うので、0.5点だけ減点ということで。

ch229