「メッセージ性の強い作品、何を受け取るか」天気の子 Shinさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセージ性の強い作品、何を受け取るか
前作『君の名は』視聴後の爽やかさが好きで観に行きました。
観た当初は前作と打って変わり、映像の綺麗ながら何とも後味の悪い映画という印象でした。
短絡的な考えから犯罪行為に走る愚直さ
愛の代わりに世界(東京)を犠牲にした爽やかとは言えない終わり方
しかし、咀嚼してみるとこれらは全て『頼れる大人』が登場しなかったのが原因ではないかと考えました。
ヒロインの陽菜が年齢を偽っていたのはそうして自立しないと弟と離れ離れにされてしまうからです。
世界を一変させる原因の晴れ女業もその延長線上にありました。
ですが事情を理解して配慮できる大人がいればそうではなかったはずです。
帆高が犯罪行為に走ってしまった理由も話をまともに聞こうとしなかった大人に一因があります。
登場した警察官は職務に忠実で大変良い警察だったと思います。
過去の凶悪な少年犯罪に由来する強硬な態度でしょうが、少年少女の実情に寄り添うことはできませんでした。
劇中で少年の帆高と対話しようとした大人は須賀だけでした。
ゴシップに近い記事を仕事にし、帆高から飯をたかるなどとても褒められた大人ではありません。
帆高を助けるために取った行動も泥臭く幇助行為でしたが、少なくとも帆高に対する責任は取ろうとしたのだと思います。
帆高が陽菜の弟の凪をセンパイと呼んだのは年齢にかかわらず頼れる存在であったから。
また陽菜が実は年下だったと発覚した時の悔いるような「俺が一番年上」発言。
これは年齢的に自分が一番大人に近いのだから最も思慮深く率いる責任があったと反省してるのではないでしょうか。
わずか15,6歳の少年少女に選択を強いる状況になったのも同様です。
劇中の晴れ女人柱の仕組みについては説明がありませんでしたが、適切な知識を持った大人がもっと適切な行動をとれたんじゃないかと思わずにはいられません。
子供の頃にイメージする大人及び社会はみんな信用できる頼れる存在でした、であったと記憶しています。
では今その期待に応えられる大人であり社会になっているのか?と私はそのようにメッセージを受け取りました。
ですがその質問に良い答えを返せるか自信がありません。