「誰しも心の天気は常に大雨で、時には激しく荒れ狂っている。ああしたい...」天気の子 たつさんの映画レビュー(感想・評価)
誰しも心の天気は常に大雨で、時には激しく荒れ狂っている。ああしたい...
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誰しも心の天気は常に大雨で、時には激しく荒れ狂っている。ああしたい、こうしたいって欲にまみれている。誰しもそうであるはずなのに、そんな自分に気づいているのに、大半はその内なる世界から目を背け、晴れを装っている。少年は若くしてその晴天に耐えきれず、大雨が降りしきる大都会へ飛び出した。冒頭での大雨にはしゃぐ彼の姿はとても印象的だ。社長の言う通り、本来世界は狂っているはずのもの。狂ってて何が悪いというのだろう。狂っている彼を哀れな眼差しで見過ごすか、はたまた老刑事のように彼に対して羨ましさを覚えるか…
彼は元来自惚れが強く、自意識過剰のように思われる。最後までそうだった。同時に「雨でいいんだ。大丈夫なんだ。」と、そんな自分を受け入れる強さをも持ち合わせていた。野田はこれまでの新海の作品に対して「監督は今まで結末に対してどこか臆病になるところがあった。でも今回は我を押し通したように感じた。」と同タイトルの小説版の解説にて記している。監督は公開に先立った心境として「怖い」とニュースにてコメント。私は『天気の子』以外の新海作品を観たことがないため、偉そうなことを言える立場ではないが、おそらく今回、監督は晴れを装うことなく、世間の反応に恐れを感じながらも帆高のようにラストまで雨の世界にしっかり身を置いていたのだろう。
私はそんな帆高、新海を羨ましく思った。
雨でいいのだ。むしろ、雨であることにもっと誇りを持つべきなのかもしれない。
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